暁 〜小説投稿サイト〜
自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
最終話 旅はこれから
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
また世界地理の本を書くんでしょ。いっぱい旅して、ネタをあげないとね」

 デュラは、ペザルから贈られていた『山神様』の称号を返上。
 ソラトや子どもたちと一緒に、もっと積極的に山から出て、人間と触れ合う機会を増やすようにする方針にしたらしい。
 伝説になるのではなく、現実で居続けること。それが大魔王との約束を果たす第一歩――そう夫婦で結論を出したようだ。
 ゆくゆくはアルテアの民を招いて交流することも考えているとか。

 赤髪の青年アランは『死霊還帰(ターン・アンデッド)の魔法を広める旅』に出た。
 今は大陸のどこかを旅していることだろう。

「そういうことで、ティア」

 ティアに一度話しかけてから、シドウはチラッと少しだけ受付の女性を見た。
 受付の女性が、拳を握って応える。
 そしてまたティアへと顔を戻す。

「ティア。この町のこの場所で言うのがいいかなって思ったから、言うけど」
「何?」

 聞き返したティアの前で、シドウは息を吸い込む。
 大きく、肋骨に痛みが走るほど吸い込む。
 そして目をつぶり、ティアに向かって力の限り叫んだ。

「お・れ・とっ!! けっ・こ・ん・し・て・く・だ・さ・いっ!!」

 あまりの声の大きさと、その内容。
 待合室の歓談がピタリとやんだ。動きも固まる。
 時がとまったかのような静寂となった。

「は? え? ちょっと、何!?」

 あっけにとられるティア。

「いや、俺のほうからきちんと言わないとって――」
「なにもそんな大きな声で言うことないでしょ! あっちに丸聞こえじゃないの!!」

 ティアの抗議に、横から受付の女性の声が挟まった。

「ティアちゃん、いちおう返事はしてあげてね。たぶん今のは一世一代の大声だったと思うから」

 顔は二人とも赤いが、より濃度が高いのはシドウのほうである。
 うつむき、亜麻色の髪を?きながら審判を待つ。
 やがてティアが口を開いた。

「……じゃあシドウ、顔上げて」

 シドウが茹で蛸のような顔を上げる。

「はい、こちらこそよろしくお願いしますっ!」

 こちらは大声ではないが、満面の笑顔とビンタ付きだった。
 頬を張られたシドウが吹き飛んでカウンターにぶつかると、待合室の冒険者が一人、口笛を吹いて静寂を破る。
 ギルド内は爆発するような拍手喝采となった。



[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ