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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第48話 どちらも野生動物(1)
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り、デュラの傷を確認。かばうように構えた。

「わたしに任せて!」

 ティアも寄ってく。回復魔法をかけ始めた。

「あのときの女は回復役だったんだな」

 舌打ち交じりにそう言いながら、ティアを目掛けエリファスが急降下。大剣を振り下ろした。
 しかし、今度はエリファスの胴体に大きい球塊が横から勢いよく衝突する。それは人間の頭部以上に大きい氷球だった。
 衝撃で大剣の軌道が逸れた。
 床に振り下ろされたそれが、大きな金属音を発する。

 シドウはその隙を逃さず、着地したエリファスをめがけ腕を振った。
 が、またも彼の動きが速く、空を切る。
 彼は素早くバランスを回復させると、また跳躍して、先ほどとは別の柱の上部に止まった。

「ふむ。頑丈ですね。魔法は確実に当たったのですが」

 氷球を放ったのは、アランだった。
 エリファスの速度を考えると、火であぶろうとしても一瞬で抜けられてしまう。熱ではなく衝撃で、というのは最善の選択のように思えた。

 その氷球の精度と、グレブド・ヘルの乾いた空気を材料にしたことが嘘のような大きさ。それは銀髪の騎士に警戒感を抱かせるには十分だった。

「魔法使いもいたのか――」

 エリファスの標的はアランへと向かったが、その大剣はふたたびドラゴンの爪によって遮られる。シドウが体高を生かし、アランの体の上で受けたのだ。

 今度は一転、エリファスは天井近くには戻らず、そのままシドウとの近距離の戦闘に切り替え始めた。
 これだけ距離が短ければ、強い魔法は使いづらいだろう?
 アランに対しそう言っているように見えた。

 柱が点在しているので、腕を遠慮なく振り回すと柱に爪をめり込ませてしまう恐れがある。
 シドウはそう考え、加減して爪を繰り出すが、まったく当たらない。

 逆にエリファスは自在に動く。
 回避の跳躍でも、最初から計算していたかのように柱で三角飛びをし、シドウが次の攻撃を出す前に懐に入る、もしくは背中に回る。

 シドウは腕や尻尾で振り払おうとするが、その速い動きについていけない。
 純粋な力比べならドラゴンに軍配が上がるはずなのだが、エリファスはうまく動き回り、押し合いにはしなかった。

 ソラトも、回復魔法を使用中のティアを意識しながら加勢のタイミングをうかがう。
 が、なかなか入るチャンスがない。

 やがて、大剣がシドウを捉えた。
 鱗が割られる音が響く。
 右足が深く斬られ、赤い血が噴き出した。
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