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おぢばにおかえり
第五十九話 先輩と神戸でその三十

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「よくないわよ」
「先輩のことでもですか」
「私のことはいいから」
 こう私に言うのでした。
「あの子が私に何を言っても」
「いいんですか」
「そう、本当にね」
「先輩を責めるみたいなことを言っても」
「いいから」
 先輩は私にしっかりとした口調で言いました。
「ちっちもそこはね」
「いいんですね」
「ええ、本当にね」
「先輩は阿波野君に優しくないですか?」
「優しくないわ、言う資格がないのよ」
「資格が、ですか」
「そう、私がしたことだから」
 それでとです、先輩は私に言いました。
「だからね」
「先輩がされたことだから」
「許されないことだから」
「それで阿波野君に言われてもですか」
「言わないわ、ずっと反省するから」
 これが先輩のお言葉でした、ピータンは美味しいですがそれも今はあまり味がしませんでした。こちらのゆで卵も好きですけれど。
「その人には酷いことしたから」
「その人は今は」
「天理大学以外の大学に通ってるわ」
「そうなんですね」
「高校時代ずっと暗くてね」
「佐野先輩に告白したんですよね」
 私が聞く限りではです。
「そうですよね」
「そうよ、それであの娘も子供だったから」
 小柄で童顔なのはそうですがこの場合は人としてだとわかりました。
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