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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
生真面目くんの憂鬱
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風が吹く。
木々の間を駆け抜けて、緑がさわさわと揺れた。
空に浮かぶはソフトクリームのように柔らかい雲。
とてもこの世界に、異世界の子供達が召喚されるほどの危機が訪れているとは思えなかった。
でも不安というのは、音もたてずにいつの間にか背後に忍び寄っているものである。
どれだけ警戒していようとも、闇はすぐそこまで迫っている。

今も。

例えば常人では気づかないほどの小さな大地の揺らぎ。
例えば空気を擦るような音に乗って空を覆う黒い歯車。





漆黒に呑まれた空間には、光すら侵入を許されない。
大輔はそんな暗闇の中で、1人ぽつんと立っていた。
辺りを見渡しても、太一や治や空、ヒカリちゃんも賢も、そしてブイモンもいない。
上も下も、前も後ろも右も左も、何も分からない。
身体に上手く力が入らないのは、何故だろうか。
ぼんやりと漆黒の向こう側を見つめていた時だった。


ぽう……。


小さな光が灯る。
大輔の顔ぐらいの大きさの光が、ふっと浮かび上がった。

「………………………………………………………………………………………………………………」

ゆっくりと、大輔は右手を肩の位置まで上げる。手を伸ばす。
1歩、また1歩と、大輔は光に近づいていく。


ぽう…………。


光が大きくなる。

ふわり……。

光の中に、“誰か”が立っていた。









ごちん、と頭に衝撃が走って大輔は目を覚ました。
ぎゃあっという悲鳴を上げて飛び起きた大輔は、ベッドのクッションではなく固い床の感触でベッドから落ちたのだと気づいた。
更に、大輔の悲鳴を聞いて先輩達が何だ何だと飛び起きてしまったので、慌ててすみません、って謝罪する。
莫迦野郎、って太一に頭をぐりぐりされた大輔は、本当にごめんなさい、って一生懸命頭を下げて何とか許してもらった。
時刻は7時頃。そろそろ起きてもいい時間帯か、って治の号令により、男子はのろのろと身支度を始める。
デジモン達は、まだ寝ていた。
それぞれのベッドヘッドにある2段の引き出しを開けて、子ども達は自分の着替えを取り出し、パジャマをその中に入れた。
ゲンナイがくれた機能のおかげで、衣と住を提供された子ども達は、こちらに飛ばされたその日から身に着けている服をずーっと着ていなければならない、という覚悟を持たずに済んだ。
使用した服は引き出しに入れておけば、光子郎のパソコンにしまわれた時にガードロモンというデータ化されたデジモンが洗濯をしてくれるらしいので、毎日新しい服を着ることができる。
太一なんかは、泥まみれになっても平気ってことだよな、って何か企んだ時の顔をしたから、治と空がやるなよ?絶対やるな
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