暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
三十八 名前
[2/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
になる必要があったのではないか。


様々な推察をしつつも、カブトはひたすら名の知らぬ子どもを追う。
以前は“根”のスパイとして渡り歩いた五大国。あの時は“根”の狗としてただ、情報を集めていたが、今は違う。

目的があった。
そして、カブトはその目的にようやく出会う。

それはもはや、運命と言っても過言では無かった。










『赤砂のサソリ』。
音を消し、匂いを消し、己を消す────まるで俺の傀儡のようだ、とサソリに気に入られ、カブトはある組織に入り込んだ。

『暁』。
各国の抜け忍たちで構成され、構成員のほとんどがS級犯罪者とされる謎の組織。


謎に満ちたあの金髪の子がいるとすれば此処ではないだろうか、と推理したカブトの勘は当たった。

サソリとツーマンセルで組んでいた大蛇丸が、カブトの姿を見て、一瞬、驚く。
直後、愉しげに「生きていたのねぇ…」と呟く大蛇丸の値踏みするかのような視線に、サソリは顔を険しくさせた。

「おい…大蛇丸てめぇ…なんだ、その眼は?」
「あら?ただ、良い駒を拾ったものね、と感心していただけよ。貴方の傀儡よりも役に立ちそうじゃない」
「……それは俺への侮辱か?」

傀儡の天才造形師であるサソリに対しての大蛇丸の物言い。
己が造る傀儡を馬鹿にしているような口調を耳にして、サソリは傀儡人形『ヒルコ』の中で顔を顰める。

「前々から気に入らなかったが…よほど死にてぇらしいな」
「貴方の傀儡になんて願い下げだわ」
「ハッ、安心しろ。カサカサの蛇の抜け殻なんざ、傀儡の材料にもなりゃしねぇよ」

売り言葉に買い言葉。険悪な空気を感じ取って、カブトはその場からそっと後退した。
途端、サソリは傀儡人形『ヒルコ』の口許を覆っていた布を取り払った。


口の開閉部分から、数多の毒針が大蛇丸目掛けて飛び交う。
それを蛇の如き柔軟な動きで回避した大蛇丸は、服裾から蛇を口寄せする。蛇は『ヒルコ』の尾を締め付け、その動きを止めた。
だが、そこで終わるサソリではない。

黒衣の裾から射出した筒。一見、木の棒に見えるそこから、再び毒針が飛び交う。
蛇で『ヒルコ』の尾を取り押さえている大蛇丸は、くっと口許に弧を描いた。笑った口から飛び出した蛇。
数多の蛇が咥える刀が、数多の毒針を弾く。

地面に刺さる毒針と、蛇の刀。針地獄と化したその場には、毒針に串刺しにされた蛇の躯があちこちに横たわる。
攻防一体の傀儡『ヒルコ』の中で、サソリは獰猛な笑みを口許に湛えた。

片や、周囲の砂を赤い血で染めた傀儡師。
片や、獲物に狙いを定める狡猾な蛇。


一時の沈黙の後、双方が動いた。決着をつけんと、同時に仕掛ける。

直後、カブトの眼は目の前の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ