暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第九十七話 井上一族その十
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「そしてな」
「そのお酒が過ぎたので」
「ああなってしまわれたからな」
 若くして世を去ったからだというのだ。
「だからじゃ」
「それ故に」
「わしは控えてな」
「長く生きられるおつもりですね」
「左様、好きであるが」 
 実は元就は酒が嫌いでない、むしろこちらであり今も言うのだ。
「しかしな」
「それでもお身体の為に」
「あえて殆ど飲まぬ様にしている」
「左様ですね」
「だがたまにはな」
「この様にですね」
「飲む時もある、では今宵はな」
 妻にこうも言った。
「休む」
「そうされますね」
「ゆっくりとな」
「まだ殿が休まれる時でなくとも」
「ははは、わしは酒癖が悪い」
「愚痴が出るというのですね」
「人にその様なことは言うものではない」
 愚痴、これを漏らしてはならないというのだ。
「だからな」
「そのこともよく言われていますね」
「だからな」
「殿ご自身が言われてはですね」
「本末転倒じゃ、だからな」
 それでというのだ。
「今宵はな」
「これで、ですね」
「休む、しかし明日の朝は」
「二日酔いですか」
「それになっておるであろう」
 飲み過ぎたが為にというのだ。
「そうなっておるわ」
「では朝のお風呂で」
「すっきりするとしよう」
 もうこのことも頭に入っていた。
「そうしよう」
「それでは」
「こよいはこれでな」
「はい、では私もです」
「これでじゃな」
「休みます」
 こう言うのだった。
「殿と共に」
「そうしてくれるか」
「はい」
 微笑んでの返事だった。
「その様に」
「ではな」
「はい、それとですが」
「それと、とは」
「今度四郎の元服ですね」
「そのことじゃな」
「間もなくですね」
「うむ」
 その通りだとだ、元就も答えた。
「それではな」
「そのこともですね」
「間もなくな」
 まさにというのだ。
「行われる」
「左様ですね」
「まだ子供は多く」
 そしてというのだ。
「元服は続くが」
「それでもですね」
「三人となった」
 元服した子達はというのだ。
「そしてその三人にな」
「これからはですね」
「励んでもらう」
「毛利家の為に」
「そうしてもらう、しかしこれまでな」
 三人の子達が成長するまでというのだ。
「長かったな」
「左様ですね、ここまで」
「それでいてあっという間じゃ」
「そうも思えますね」
「不思議じゃ、子供を育てておると」
 歳月の流れ、それはというのだ。
「非常にな」
「長く感じ」
「そして短くもじゃ」 
 その相反する両方をというのだ。
「感じる」
「実に不思議ですね」
「これが親かのう」
「子供を見て育てていますと」
「長く感じて
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ