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戦国異伝供書
第九十七話 井上一族その八

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「これからも宜しく頼む」
「それでは」
「我等何処までも毛利家と共にあります」
「吉川家、そして小早川家共」
「そうしていきまする」
「是非な、では今宵はな」
 この夜のことも話した。
「酒があるからな」
「宴ですか」
「それをですか」
「これよりですか」
「行ってだ」
 そしてというのだ。
「そのうえでだ」
「我等はですか」
「酒を飲み」
「そしてですか」
「うむ、わしも飲む」
 元就もというのだ。
「そうする」
「そうされますな」
「今宵は」
「殿もですな」
「酒を飲まれますな」
「その様にする」
 こう言うのだった。
「わしもたまには飲む」
「不断は慎んでおられますが」
「時にはですな」
「殿も飲まれますな」
「そうされますか」
「その様にしたい時もあってな」
 それでというのだ。
「楽しませてもらおう」
「わかり申した、それではです」
「今宵は殿も楽しんで下され」
「酒を心ゆくまで」
「そうさせてもらう」
 こう言って実際にだった。
 元就はその夜は酒を楽しんだ、滅多に飲まない彼であるが決して下戸ではなく飲みっぷりも実にいい。
 だがそれでもだ、彼の肴はというと。
 他のものと変わらない、川魚を焼いたものや漬けものである。そして味噌等もあるがそうしたものを口にしている。家臣達はその元就に問うた。
「また質素ですな」
「もう殿はこの安芸一国の主ではありませぬ」
「備後、備中、美作、備前も手に入れています」
「今が五国の主です」
「そこまでの方になられ」
「石高も百万石を超えています」
「そこまでの方になられましたが」
 こう元就に問うのだった。
「それでもですか」
「肴はその様なものですか」
「我等と同じですが」
「それだけのものでようのですか」
「構わぬ、むしろじゃ」
 元就は笑ってこうも言った。
「わしだけが贅沢をするなぞじゃ」
「その方が、ですか」
「殿としてはよくないとですか」
「そう考えですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「我等と同じものを肴にされ」
「そうして飲まれていますか」
「そうされていますか」
「そうじゃ、百万石を超えてもな」
 その石高がというのだ。
「それに溺れてはならぬ、まだじゃ」
「はい、尼子家と大内家がいますな」
「あの両家がまだ」
「それで、ですな」
「殿としましては」
「油断せずにな」
 そんなことはというのだ。
「だからな」
「肴も質素にされ」
「そして、ですか」
「飲まれて」
「そのうえで、ですな」
「楽しむ、ではな」
 彼はあらためて言ってだった。
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