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キジムナーと蛸
第一章
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                キジムナーと蛸
 キジムナーが魚特にその目玉が好きなことは沖縄の者なら誰もが知っている、とにかく海や川の幸が好きなのだ。
 だがそんなキジムナーも苦手なものがある、それは何かというと。
「蛸が苦手なんだ」
「そう言われているのよ」 
 那覇市で小学校の教師を務めている与那嶺寛一は自分のクラスの生徒である渡真利雄吾に話した。丸眼鏡に穏やかな顔立ち、短い黒髪で背は一七〇を少し越えた位で少しずんぐりした感じの身体付きである。口調は少しなよっとした感じだ。
「キジムナーは」
「そうなんだ」
「面白いでしょ」
「うん、お魚が好きでも」
「魚介類全体がね」
「それでもなんだね」
「蛸だけはね」 
 これだけはというのだ。
「駄目で」
「それでなんだ」
「蛸を見るだけで逃げ出すそうなのよ」
「それはどうしてなの?」
 渡真利は与那嶺に問うた、小柄で大きな目を持つ子供だ。勉強熱心で何にでも興味を持つ子供で小学三年生としてはかなりの頭のよさである。
「キジムナーは蛸が嫌いなの?」
「どうしてか?」
「蛸って美味しいよ」
 渡真利は蛸を料理した時から話した。
「それこそどうお料理しても」
「そうね、蛸は凄く美味しいわね」
 与那嶺もこう言う。
「本当に」
「ウチナーの料理でもヤマトの料理でも」
「どうしてもね」
「美味しくて」
 それにとだ、渡真利はさらに話した。
「可愛いよ」
「外見もいいわね」
「うん、全然怖くないよ」
 蛸はというのだ。
「本当に」
「先生もそう思うわ」
 このことは与那嶺も同意だった。
「どう見てもね」
「蛸は怖くないわね」
「美味しいよね」
「そして可愛いわ」
「そんな蛸をどうして怖がるの?」
 キジムナーはというのだ。
「先生知ってるの?」
「調べてみるわ」
 実は与那嶺もそのことは知らない、それでこう答えた。
「それでわかったら答えるわ」
「うん、じゃあね」
「待っていてね」
「そうするね」 
 渡真利は真面目な顔で答えた、教室での話だった。
 与那嶺はこの時からキジムナーについて調べてみた、おおよそ彼が既に知っていることばかりが本やインターネットで書かれていた。だが。
 何故蛸が嫌いかは書かれていなかった、それでだった。
 困った彼は叔父である寺の住職の与那嶺鼎に相談した、見れば甥がそのまま歳を取って僧衣を着た外見だ。浄土宗なので僧衣も寺もそちらのものだ。
 叔父は甥が寺に来るとまずはその理由を尋ねた。
「またどうしてここに。法事は」
「はい、先ですが」 
 甥は叔父に謙虚な態度で答えた。
「お聞きしたいことがあって来ました」
「御仏のことかな」
 僧侶なのでそのこととまず尋ねた。
「それなら
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