願いとは
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「ここ?」
大広間に足を踏み入れた可奈美の問いに、アカメは頷いた。
「この広間が、マスターの領地。ここで永遠に暮らしたいと言っていた」
「随分ご丁寧に教えてくれるのね」
ほむらが皮肉交じりに吐き捨てる。
「貴女のマスターなのに」
「……」
「貴女、生き残りたいんでしょ」
「……ああ。だが、私は途中で死んだ。今はすでにただの亡霊だ」
「亡霊?」
可奈美の疑問符に、アカメは頷いた。
「お前、まだサーヴァントがいないんだったな」
「うん」
「サーヴァントは、元々死人だ。願いを持った、力持つ死人がサーヴァントとしてよみがえり、聖杯戦争に参加する」
「死人……」
思わず可奈美の目線が、ほむらの隣のキャスターへ注がれる。そして、同時に脳裏に、無邪気に笑う響の顔もフラッシュバックした。
「響ちゃんも……死人……?」
「生き残ったのは私だけだった……だが、もう死んだ今、生き残る意味はないのかもしれない……」
「そう。ならば死ねばいい」
興味なさそうに、ほむらが吐き捨てた。
「昨日は生き延びてしまったといって言たのにね」
「……」
アカメはじっと黙っていた。
彼女の言葉を待つよりも、可奈美は先に部屋を探索することにした。
まるで体育館のような広大な敷地。あるのは、最奥部の固体……
「椅子?」
それは、奥に倒れた椅子だった。近寄ると、それが少し質素なデザインの椅子だと理解する。
その椅子に座ったまま倒れている人物を見て、可奈美はぎょっとした。
ガラスのような虚ろな目をした、可奈美と同年代の少年。ニット帽がトレードマークの彼は、胸元から喉元にかけて何度も刃物を突き刺されていた。
「……っ」
口を抑えながら、可奈美は無造作に投げ出された手を取る。分かり切った息絶えという結果に、可奈美は歯を食いしばる。
「ねえ! アカメちゃん!」
可奈美の声に、アカメとほむらは同時にこちらを向いた。キャスターは、ずっと足元に手を触れている。
「アカメちゃん……この人」
「……こいつは……」
アカメは、少年の顔を見下ろし、顔を歪める。
「マスターの想い人だ」
「想い人って……? 好きな人ってこと?」
可奈美の問いに、アサシンは頷いた。
「マスターは……コイツと、永遠の時を過ごすことが願いだと言っていた。葬るとは思えない……」
「でも、現実に彼は殺されているわ」
無情にも、ほむらは現実を突きつけた。
「それとも、他に殺人犯がいるのかしら? 今から探偵ごっこでもする?」
「ほむらちゃん……」
可奈美が咎めるが、ほむらは口を閉じない。
「愛する者を手にかけるなんて、正気じゃないわ。随
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