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曇天に哭く修羅
第三部
本当の顔

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青獅と再会した翌日。

紫闇はロードワーク。

何時もなら幼馴染みの《的場聖持(まとばせいじ)》や《エンド・プロヴィデンス》と一緒に走るところだが今日は別のルートを走っていた。


(一歩進む為に何かを捨てる。でないと俺みたいな人間は強くなれないし、才能が有る人間には絶対追い付けないだろう)


これは間違っていない。

真理だと紫闇は思っている。

彼も捨てて強くなったから。

娯楽は勿論のこと、友との付き合いや睡眠時間も出来る限り削っていく。

だから龍帝の代表チームに入れた。

そう確信している。

故に《佐々木青獅》は正しい。


(そのはずなんだ)


だが紫闇の気分は晴れない。

青獅の妹が気になるからだろうか。

他に思い浮かばなかった。


「あのっ! 立華さんですよね!?」


紫闇は足を止めて振り返る。

青獅の妹だ。

上下青のジャージ。

黒いツインテールが揺れていた。


「わたし、《佐々木凜音(ささきりんね)》って言います」


彼女は昨日のことを謝る。

その顔は何処か暗い。

紫闇は思う。

自分が青獅に勝ったことで佐々木家の関係は壊れてしまったのだろうと。


「なあ凜音。俺、知り合いの屋敷で世話になってるんだけどさ。これからは一緒に食事とかしないか?」


心の隙間が埋まるとは言えないが凜音の寂しさが紛れるかもしれない。

そう思い誘ってみた。

凜音の来訪に黒鋼の屋敷は歓迎一色。

クリスや焔はまるで妹が出来たように喜び彼女のことを可愛がった。

凜音は焔の料理が気に入ったようで焔から料理を教えてもらうことになる。

しかしやはり自然な表情は無い。

作った顔なのだ。

紫闇は決めた。


(佐々木と凜音を和解させる)


二人の絆を取り戻す。

やり方は解らない。

しかし必ず元に戻さなければ。

紫闇は凜音が見せる本当の顔がどうしても見たくなってしまったらしい。

紫闇が青獅に感じた物足りなさの原因がそこに有るのだとは知らずに。

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