第1部
アッサラーム〜イシス
眠らない町
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る辛さの量を越えていたらしい。
「ごっ、ごめん! 大丈夫?」
「お前……あとで覚えとけよ……」
若干涙目になっているユウリが、恨めしそうにいい放つ。まずい、これあとで絶対怒られる奴だ。
「あの、ユウリ……」
「アルヴィスのところに行ってくる」
結局ユウリは食べかけの串焼きを全部私から奪い取り、ここからは別行動だと言って、私を置いてその場から立ち去ってしまった。
どうしよう。完全に彼を怒らせてしまったようだ。
モヤモヤした気持ちでドリスさんのお店に到着すると、店の外でてきぱきと働くルカの姿があった。
「あ、アネキ。どうしたの?」
「ちょっとね。時間が空いたから、ルカに会いたくなっちゃって」
私の言葉に気づいたルカは、作業でしかめっ面をしていた顔を綻ばせた。
「アネキは、相変わらずだなぁ」
その彼らしいマイペースな口調に、私は心底安堵した。環境が変わって自身の生活が大変な中、ルカ自身が変わってなかったのは彼の強みと言えるだろう。
「仕事はどう? 家にいるより大変でしょ?」
「まーな。でも、おれがやりたくてやってるだけだから後悔はしてないぜ。アネキだって似たようなもんだろ?」
「うん、そうだね。私も後悔はしてない」
そう言って、自然と視線を落とす私。ルカが訝しげな顔をしてこちらをじっと見る。
「アネキ、なんかあったのか?」
顔に出ていたのだろうか。私は笑顔で誤魔化した。
「ううん。大丈夫だよ。それよりルカ、ドリスさんに迷惑とかかけてない?」
「だっ、大丈夫だよ! そりゃちょっと店の窓ガラス割ったり、注文の数間違えたりはするけど、後始末は全部おれがやってるし!」
「そりゃあそうでしょ。なんかちょっと心配になってきたんだけど?」
あたふたしながら言う彼の姿を見て、殊更不安を募らせる私。けど、次の言葉を言う前に、彼は凛とした顔つきに変わった。
「おれが頼りないってのはアネキも知ってると思うけど、一人で家を出た以上、覚悟持ってここにいるつもりだから。だから、安心して」
その真摯な目が、私の心を揺さぶった。ルカが冗談で言っている訳じゃないってのは、長年一緒に暮らして来たからこそわかる。
「うん、わかった。ルカは昔から、こうと決めたら最後までやり遂げる子だったもんね」
私は頭一つ分低いルカの頭を撫でた。
「私、応援してるから。困ったことがあったら、お姉ちゃんになんでも言って」
そう言うとルカは、照れながらも私の手を振り払う。
「いやアネキには言わねーよ。だって魔王倒すじゃん。おれのこと構ってる場合じゃないだろ」
「そういうの気にしないでいいから。家族として、お
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