暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン27 「呪われし」懐古の悲願
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 広場での長きにわたる決闘が終わりを告げ、新時代の息吹が旧世代を打ち破った、その一方で。
 時間は少し巻き戻りその真下、地下の上水道にて。

「特定した。お前も後から来い」

 そんな短い呟きをして、薄闇の中を駆ける人影があった。決して広くはない通路にその足音が響き渡り、それに驚いた鼠らしい小さな影が慌てたように自らの住処へと引っ込んでいく。一定の間隔をとって頭上から弱々しく照らす非常灯の光に、銀髪がふわりと揺れる。
 その正体は、いまさら言うまでもない。ようやく今回のふざけた計画の根元を掴んだ鼓千輪が、地下のルートを辿りその場所に走っている。走りながらも器用に手元の端末を操作し、立ち止まるのも惜しいとばかりに半ば壁を蹴るようにして強引に方向転換しつつ突き止めたその位置を糸巻へと送信する。

「いったい何が起きて―――――」
「デュエルポリスの人が―――――」

 一定の距離ごと、地上の世界に通じるマンホールに差し掛かるたびに、地下にいる鼓にも上の混乱が断続的に聞こえてくる。立ち止まってゆっくり耳を澄ましたりその内容を吟味する暇はないが、さぞかし大変なことになっているだろうとは途切れ途切れの単語からでも容易に想像がつく。

「救急車は―――――」
「ひどい火傷なんだ―――――」

 この様子だと、地上を一手に引き受ける糸巻もしばらくはこちらの援護に来るのは難しいだろう。上の混乱が収まるのを待っていたら、それこそ下手人が逃げてしまう。蛇ノ目は強敵だが、あの糸巻がそうそう後れを取ることもあるまい。ゆえに、こちらは自分が1人で引き受ける。
 そう決意を固めながら、頭の片隅では通り過ぎていくマンホールの数を数えていた。この横道に入ってから3つ、4つ、5つ……。

「……と、ここか」

 そして、その足が止まる。そこは、とあるマンションの裏手に位置するマンホール。手元の情報によればそのマンションは外周にぐるりと木を植えてあるため、そうそう外から覗かれる恐れもない。まして今は非常事態、住民も反対側のベランダから糸巻たちの戦いを見るのに忙しいだろう。そこまで思考を巡らして鼓は珍しくにやりと笑い、どこかウキウキした気配すら感じさせる様子でデュエルディスクを起動した……ただし、「BV」妨害機能をオフにした状態で。

「真っ当に開けてやってもいいんだが、あるものは有効活用せねば、な」

 誰に言い訳するでもなくうそぶくと、さっと数歩下がって目の前にスペースを空けてから1枚のカードを叩きつける。

「やれ、超重武者ビッグベン−K」

 瞬間、何もない空間に実体化した機械仕掛けの僧兵が出現した。腰の排気口から一斉に蒸気を吹き出すと、胸のメーターが緑から限界寸前のレッドゾーンまで一気に針が振れる。そして軋みひとつなく動き出した
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