暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第40話 訓練
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
による単横陣への組み換えすら上手くこなすことができない。対静止標的撃破率は五〇パーセントを切っていて、対可動標的撃破率など一〇パーセント以下だ。ロボス中将率いる第三艦隊と比較してはいけないと分かっていたが、充足率六割とはいえ帝国軍と戦い続ける制式艦隊と辺境の警備部隊ではかくも実力差があるのかと痛感させられる。

 これが一〇数年後のランテマリオ星域会戦で、混成艦隊の前衛部隊が司令部からの統制を逸脱した狂乱を演じた挙句、手痛い反撃を受けて以後の攻勢を失うに至った遠因の一つだろう。日常的な警備活動を少数の艦艇で実施せざるを得ない環境下では、まともな集団訓練などする時間はない。リンチと共に働いたケリム星域のような経済的に重要な星系ならば艦艇の数に余裕があるのでまだしも……三日ぶっ通しで実施した訓練の結果が悪いという事は、再びウエスカに集まった艦長達もどうやら十分理解はしているのだが。

「艦長達はこの訓練の意味を知りたがっている」
 蓄積された疲労と、結果に対する慙愧と、ミスを指摘する小生意気な若造への不満で、顔色がさえない艦長達を代表してカールセン中佐が俺に問うた。
「我々の目的はマーロヴィアに巣食う宇宙海賊の掃討にあるはず。海賊が集団化したとはいえ、その統制は脆く攻撃力は制式艦艇に比べて貧弱だ。このまま訓練を継続するよりも、速やかに戦隊を航路防衛や星系内捜索活動に戻すなり、偽装海賊としての活動を始める方が効率的だと考えるが、どうか?」

 ストレスが限界点に達しようとしているのは十分理解している。部下からの突き上げは相当なものだろう。実戦経験のほとんどないエリート崩れの若造の道楽になんで付き合わねばならないのか。彼らにおもねることは簡単だし、拒絶することも簡単だが、それでは目的を果たすだけの実力を得ることはできない。彼らが彼らのキャリアが示す実力を一二〇パーセント発揮できるようにしなければ、本物を倒すことはできない。

 査閲部に在籍していた時に話を聞いた年配の勇者達は、既に出世の望みがないことを受け入れていた。目の前の彼らはそうではない。年上の上官を命令ではあっても指揮する為には、彼らを納得させるだけの理由と統率力を示さなくてはならないのだ。俺は下腹部に力を込めて大きく息を吐くと、こちらを見つめるカールセン中佐をはじめとした艦長達の顔を一望する。いずれも五〇歳を超えているであろう、疲労がなくとも皺が顔に寄る年齢になった下級佐官達だ。その中で一番手前に座る、カールセン中佐を俺は正面から見据えた。

「海賊の掃討も確かに目的の一つですが、それだけではありません。最大の目的は、このマーロヴィア星域管区の再活性化であります」
 その言葉に、艦長達の顔に戸惑いが浮かぶ。

「その最大の障害となるのがブラックバート……ロバート=パーソンズ元
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ