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思わず舞台へ
第一章
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               思わず舞台へ
 ルチアーノ=パヴァロッティ、彼が来日する時彼が出演する作品が注目された。
「リゴレットに出るのか」
「だとすれば役はマントヴァ公だな」
「間違いなくな」 
 パヴァロッティの声域はテノールでありリゴレットではテノールの役はそのマントヴァ公であるのだ、それで日本の歌劇ファン達は口々にこう話したのだ。
「何でもイタリアでも評判らしいな」
「パヴァロッティのマントヴァ公というとな」
「声域も声の色のあの役に合っているというが」
「特に女心の歌がいいらしいな」
「あの役の代名詞の様な役だが」
「楽しみだ」
「パヴァロッティといえば高音だな」
 彼の評判の中で一番高名なこのことも言われた。
「ハイシーが凄いらしいな」
「あっちじゃそれで売り出し中だな」
「何でも難易度の高いハイシーを普通に出すらしいぞ」
「一曲のうちに何度も」
「コレッリも凄いらしいが」
 フランコ=コレッリ、五十年代から当時まで活躍している長身かつ美形のテノールの話もここで出た。
「パヴァロッティはまた別格だというな」
「そのパヴァロッティが来日するか」
「そしてリゴレットを歌うか」
「これは楽しみだ」
「一体どんな美声だ」
「どんな歌唱力だ」
「ハイシーは聴かせてくれるか」 
 日本の歌劇ファン達は楽しみで仕方なかった、そして。
 正式に来日した時にだ、彼等はこんなことを言った。
「本当に来たぞ」
「キャンセルせずにな」
「じゃあ本当に日本で歌ってくれるか」
「リゴレットでマントヴァ公を」
 歌劇では喉の調子等での出演のキャンセルは多い、その代役で歌って評判を得る歌手も実に多いからこれも神の配剤ということか。
「さて、ではだ」
「後は上演の日を待つだけだ」
「リゴレットに出演する時を」
「マントヴァ公を歌う時を」
「特に女心の歌だ」
「あの歌をどう歌ってくれるか」
「まことに楽しみだな」
 とにかく彼等はパヴァロッティの歌を聴く時を今度は指折りして待っていた、既にチケットは買っていたので問題なかった。そして。
 パヴァロッティの歌を聴いたリゴレットの序曲が終わると幕が開きすぐにパヴァロッティは最初の聴かせどころ『あれかこれか』を歌った。
「この役はテノールの登竜門の一つだ」
「若いテノールはまず歌う役だ」
「椿姫のジェルモンやドン=ジョヴァンニのドン=オッターヴィオ、ラ=ボエームのロドルファもそうだが」
「若いテノールはこの役で技量を磨く」
「そして名声も得るが」
「既にこれは大テノールだ」
「大テノールの風格があるぞ」
 歌劇歌手としてはまだ若手だが、というのだ。
「まだ三十代だが」
「これだけの歌を歌うなんてな」
「これから凄い歌手になるぞ」

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