暁 〜小説投稿サイト〜
必死に調べると
第三章

[8]前話
「そうしたらコロと離れなくていいだろ」
「けれどあなたは」
「週末には戻って来るさ」
 夫は妻に笑って話した。
「だからな」
「それでっていうのね」
「どうだ」
「そうね、単身赴任も大変だけれど」
 それでもとだ、妻は夫に答えた。
「子供達はどうしてもコロと離れたくないし」
「友達のこともあるしな」
「それにお家もね」
「ああ、折角買ったこの家もな」
「売らなくて住むから」
「それじゃあな」
「それがいいかも知れないわね」
 妻はよしとした、こうしてだった。
 父が佐渡まで単身赴任をすることになってことは収まった、それで一家はコロと離れずに済んだ。そのうえで。
 父は佐渡に行った、長男はその父を見送ってから弟にコロを見つつ話した。
「お父さんも戻って来るからな」
「だからだね」
「コロと一緒に待っていような」
 まだ幼稚園児である弟にわかりやすく話した。
「そうしような」
「そうだね」
「コロと離れずに済んだんだ」
 愛する家族と、というのだ。
「お父さんは戻って来るけれどな」
「コロはそうはいかなかったから」
「よかったんだ、じゃあな」
「それならだね」
「お母さんもいるからな」
 母のこともあってというのだ。
「暫くはな」
「コロと一緒にだね」
「頑張っていこうな」
「うん、わかったよ」
 弟は兄の言葉に笑顔で答えた。
「それじゃあね」
「一緒にな、コロもそれでいいよな」
 兄は今度はそのコロに声をかけた、すっかり大きくなって甲斐犬程の大きさになっている。だが顔立ちはそのままだ。
「お父さんを待ちながら一緒に頑張っていこうな」
「ワン」
 コロはその彼の言葉に顔を向けて一声鳴いて応えた、その彼を見て。
 兄は弟に笑って話した。
「じゃあ今からコロの散歩行くか」
「朝のお散歩だね」
「それに行くか」
「うん、じゃあコロ行こう」
「ワンワン」 
 コロは今度は尻尾をぱたぱたと左右に振って明るく応えた、そうして母に見送られて兄弟で散歩に出た。コロと一緒にいる二人の顔は明るいものだった。
 父の佐渡での仕事は二年で終わり本土に戻った、すると一家はこれまで通りの生活に無事に戻ることが出来た。一時の別れは永遠のものとはならなかった。


必死に調べると   完


                 2020・4・28
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ