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妹を助ける為に
第一章

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                妹を助ける為に
 野上家の子供は女の子が三人だ、だがうち一匹は人ではない。
 茶色と白の雌の柴犬で名前はマメという、母の真琴はその柴犬を見ていつも娘達に話していた。
「お姉ちゃんの綾香ちゃんより少し先に生まれたそうだから」
「お姉ちゃんなのね」
「そうよ、一日でも先に生まれたから」
 自分と同じ濃い茶色の髪の毛の上の娘に話す、真琴は濃い茶色の髪の毛の殆どを肩の高さで切り揃え後ろの一部だけを伸ばし後頭部で団子にしている。目が大きくおっとりとした顔立ちでスタイルは子供を二人産んでも崩れていない。夫の遼太郎との仲も円満だ。
「だからね」
「お姉ちゃんなのよ」
「それは綾音ちゃんも同じよ」
 下の娘にも言う、まだ二歳の夫譲りの黒髪の次女にも。二人共目元と口元は父親似できりっとしている。
「一番上のお姉ちゃんはマメちゃんだから」
「だあ」 
 まだ幼子なのでよくわかっていない感じだ、だがそれでも綾香は言った。
「いいわね」
「だあ」
「マメちゃんはいつも二人を見守っているから」
 この言葉通りだった、マメはいつも二人を見ていて二人に何かあれば真琴のところに来て鳴いて知らせていた。
 特に身体の弱い綾香のことは気にかけていてだった。
「あの娘に何かあったらね」
「その時はだね」
 夫も応えた、黒髪を短く刈っていて背は一七〇位で引き締まった学生時代の陸上部で鍛えた身体がそのままの外見である。仕事は鳶職人である。
「いつもマメが」
「そう、教えてくれてるから」
 だからだというのだ。
「私もね」
「助かってるよね」
「ええ、マメが二人特に綾香をいつも見ていてくれて」
 特に身体の弱い上の娘をというのだ。
「私に何かあれば知らせてくれるから」
「そういうことだね」
「やっぱりね」
 妻は夫にこうも言った。
「小さい子って」
「何かあるかわからないから」
「昔はちょっとしたことで亡くなったしね」
「そうらしいね」
「だからマメが何かあると知らせてくれることはね」
 妻は心から言った。
「助かってるわ」
「マメがうちにいてよかったね」
「本当にね」
 夫にもこう言うのだった、そしてだった。
 娘達をマメの助けも得ながら育てていった、そんなある日のこと。
 夫は妻からの携帯に仕事中に連絡を受けてすぐに血相を変えて現場監督に言った。
「あの、上の娘が倒れました」
「何っ、本当か!?」
「はい、幼稚園で急に高熱を出して」
 それでというのだ。
「女房が飛んで行ってです」
「そうしてか」
「今病院に担ぎ込んだらしいです」
「まさかと思うけれどな」
 監督は今の状況から言った。
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