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孫娘と柴犬
第一章

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               孫娘と柴犬
 その話を聞いて垣花小百合は夫の龍平に言った。
「よかったわね」
「ああ、保健所から犬を引き取ったらしいな」
「犬がお家にいるとね」
「和むからな」
「うちもそうだし」 
 小百合は微笑んで話した、そして家の玄関の方犬小屋があるそちらを見た。短くしている髪の毛は真っ白になっていて皺が多い穏やかな顔立ちだ。夫も白髪でオールバックにしている髪の毛も少なくなっていて背中も少し曲がってきている。
「キンタがいてね」
「随分違うな」
「私達だけだとね」
「寂しいな」
「綾が結婚してお家を出て」
「ずっと二人だからな」
「ええ、けれどあの子がいるから」
 そのキンタがというのだ、黒い雄の甲斐犬であり二人は毎日散歩に連れて行きご飯もあげて楽しく暮らしている。
「幸せね、私達も」
「だからな」
「綾のお家もね」
「これから明るくなるな」
「そうよね」
「何しろな」
 ここで夫は妻にどうかという顔になって言った。
「勇一さんがな」
「最近困ってるみたいだから」
「仕事のことでな」
「ええ、随分忙しいみたいね」
「綾も言ってたな」
「毎朝早くに出て真夜中に帰って来る」
「そんな状況らしいからな」
 娘の夫、彼等から見て義理の息子である彼がというのだ。
「綾も気遣っているらしいな」
「そんな忙しくて大丈夫かしら」
「疲れが溜まっていることは間違いないな」
「そこで犬もいたら」
 家にというのだ。
「やっぱりね」
「違うからな」
「そうよね、この前勇一さん見たら」
「実際にかなり疲れていたな」
「もうね」
 それが顔にも出ていたのだ、すっかりやつれている感じで目の光は弱く肌も荒れてかなり酷い状況だったのだ。
「綾もね」
「家でずっと一人でな」
「あの娘もパートがあるし」
「愛もあの家の中にいると」
 二人の孫娘もというのだ。
「色々大変だからな」
「あの娘だけお家にいることも多いし」
「そう思うとな」
「本当に犬を引き取ってよかったわね」
「その犬も助かってな」
 保健所から引き取られてだ。
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