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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第三話 女ったらしにご用心
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 チップレース三日目の夜。
 閉店した店内では、整列した少女達の前に腕を組んだスカロンが立っていた。
 ゴクリと誰かが喉を鳴らす音が、静まり返った客席に響く。
 客がいなくなった『魅惑の妖精』亭の客席では、給仕の少女達が目の前に立つスカロンを凝視している。少女達の視線に晒されるスカロンは、スポットライトを浴びる役者のように両腕を大きく開き。

「さあっ! お楽しみの結果発表よ!」

 スカロンが口を開き、少女達の視線が更に強まる。
 少女達の視線が強まったのを感じ、スカロンがうんうんと頷く。

「じゃあっ! 現在の上位三人を発表するわ! まずは第三位! ジャンヌちゃん! 五十一エキュー二十五スゥ」

 わあっと言う感嘆の声が起こり、拍手が鳴り響く。少女達の視線の先がスカロンから栗毛の少女に変わる。向けられた視線に応えるように、ジャンヌと呼ばれた少女が微笑み、頭を下げた。

「第二位! わたしの娘! ジェシカ! 九十七エキュー二十七スゥ、六ドニエ!」

 ジェシカの名が呼ばれると、え? と言う疑問の声が周囲から起こった。疑問の顔をスカロンに向けるが、スカロンの様子は変わらない。間違いではないのだと理解しても、未だ困惑から抜け出せない少女達が、戸惑ったような顔をしながらも拍手をする。まばらな拍手の中、チラチラと少女達から視線を向けられたジェシカは、まさかという顔を、少女達の中に微かに見える、桃色の髪の持ち主に向けた。
 コホンと握り拳を口元に当て咳払いをすることで、少女達の視線を自分に戻したスカロンは、一度ニヤリとした顔を少女達の後ろにいる人物に向け後、口を開き。

「ふふふ……では第一位! ルイズちゃん! 九十九エキュー十七スゥ、四ドニエ!」

 ええええ! と言う驚愕の声と共に、少女達の視線が桃色の髪の持ち主、ルイズに向けられた。一斉に少女達から視線を向けられ、戸惑い慌てるルイズ。しかし、視界の端に見えたニヤリと笑みを向けた士郎に気が付くと、悠然と腕を組みと、戸惑ったような顔をニヤリとした笑みに変えた。
 士郎と笑みを交換し合うルイズに、驚愕の顔を向けていたジェシカは、ぐっと唇を噛み締め。

「……ふざけないでよ」

 小さく口の中で呟くと、一人静かに騒めく少女達の中から姿を消した。








 チップレース三日目の結果発表の後。
 屋根裏部屋では、ルイズが士郎の膝の上で丸まっていた。時折髪を撫でる士郎の手の感触に気持ちよさげに目を細める。頬を優しく撫でてくる士郎の手を掴むと、半分寝ているような目で士郎を見上げた。

「……シロウの言った通りね……」
「まあ……結果は予想以上だったが。それもルイズが魅力的だったからだろう」
「ふふ……」

 士郎の言葉に、息を零すような
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