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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第十九話 巣立ちの準備
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りですか?」
「おいおい、俺達同じ同盟軍だろ?敵も味方もあるもんか」
「甘いんですね。周りは皆競争相手ですよ。そういう意味では敵ではないですか」
「…競争相手だ。敵じゃないさ」
「先輩と私では考え方に相当隔たりがあるようですね」
「そうだな。別に俺は宇宙艦隊司令長官や統合作戦本部長になろうとは思っちゃいないからな」
「将官推薦を受けておいて、ですか?他の候補生に失礼ではありませんか?」
「失礼とは思っていないよ。その二つだけが士官として最終目的地ではないだろ?地位というのは自分が頑張った結果として付いてくるものだ」
「全くその通りですよ。先輩はそうではないかも知れないが、私の頑張った結果として欲しいのは統合作戦本部長です。卒業年次の近い候補生は皆競争相手、敵ですよ。阻害要因は早い内に潰さねばならないのです」
「学年内で統合作戦本部長に一番近いのは自分、邪魔なのは俺達、という訳か」
「…そうなりますね。本人方を前にして、失礼な話ですが」

 やっぱりだ、腹立つ奴だがフォークはまだおかしな奴じゃない。転換性ヒステリーなんて病気を抱えて士官学校に入学出来る訳がないのだ。その傾向はあるんだろうが、在学中から順風満帆にエリートコースを歩み過ぎてああなったんだろう。何もかもが上手く行って挫折や障害が無かったんだ。でなければロボスが飛び付いた結果とはいえ、帝国領侵攻作戦の参謀なんかになれる訳がないのだ。第六次イゼルローン会戦だって参謀として参加している、無能な訳がない。
そんな順風満帆な所に俺達が現れた、確かに邪魔だ。しかもその邪魔者たちは秀才という訳でもない。たまたま将官推薦されただけの下士官あがりの増上慢、と来ている。フォークの判断基準だと、そんな奴等に勝てないのだから、屈辱だろう…。
しかし奴はそれを堪えている。耐えている。俺達という障害を前に、それに屈する事なく頑張っている。
考えてみればフォークも不幸な奴だ。ヤンさん越えを狙ったのが運の尽きと言うものだ。でなければ帝国領侵攻なんて、あんな粗雑な作戦考える事もなかっただろう。

 「お前の頑張りは認めてるよ。でもそれは独りよがりの頑張りだと俺は思うよ。自分も、巻き込まれた周りも、そのうち不幸にする。いずれ追い付き追い越せではやっていけない時が来る。それよりだ、俺達と一緒に来ないか」
「…来ないか、って、どこへ行くんです?」
「それはまだ分からんけどな。行けるところまで行けばいい、行き止まりだったらそこでまた考えようぜ。行き止まりだ、って一人で考え込むより皆で考えたほうが楽だろ?」
「…その結果、私が先に進むかも知れませんが、いいのですか?」
「そんときはこき使ってくれればいいさ」
「…考えておきます」
 

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