第三章
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「河童と女の間にじゃ」
「そうした子が生まれると」
「その様に言われておるか」
「そうした話か」
「うむ、そうした話も聞いたことがある」
実際にとだ、新九郎は友達に言った。
「わしはな」
「ううむ、色々とある様じゃが」
「その実は何か」
「どうもな」
「そこは」
「真実はわからぬが」
それでもというのだ。
「こうしてじゃ」
「民の不安を取り除く」
「それが国の主の務めじゃな」
「そうじゃな」
「うむ、だからこの度のことはな」
まさにというのだ。
「よかった」
「うむ、では相模もな」
「伊豆と同じ様に治めていこう」
「そうしていこうぞ」
「それで頃合いを見て」
新九郎はこうも言った。
「少し箔を付けるか」
「そうするか」
「ここは」
「お主自身をか」
「相手は上杉家だからのう」
関東管領であるこの家だというのだ。
「わしが勢力を拡げるのに邪魔になるのは」
「うむ、あの家は今は別れておるがな」
「山内と扇谷に」
「しかしどちらも力がある」
「関東の公方様よりも遥かにな」
「どちらの上杉家も」
「上杉家は名家じゃ、しかもこの関東には名家が多い」
上杉家以外にもというのだ。
「関東八家がな」
「佐竹家なり宇都宮家なりな」
「鎌倉の幕府の頃からの家じゃ」
「どの家も名家じゃ」
「それに対して我等はな」
「伊勢家は」
「吹けば飛ぶ、格なぞじゃ」
それこそというのだ。
「何にもない、今川家の家臣に過ぎなかったからのう」
「ではじゃな」
「上杉家や関東八家に対するには」
「それなりの箔、格がなければな」
「対することが出来ぬな」
家の格、戦国時代でもそれが必要であった。それで伊勢家の格では関東管領にも八家にも勝てないというのだ。
「だからな」
「そろそろか」
「伊勢家からか」
「別の家と名乗るか」
「そうするか」
「うむ、ここは思いきり大きくな」
笑ってだ、新九郎は友人達に話した。
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