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牛方山姥
第四章

[8]前話
 漁師に山姥の話をした、すると。
 漁師はその話を聞いて彼に言った。
「よかったな」
「助かったからかい」
「そうだよ」
 まさにとだ、彼は五兵衛に答えた。
「木曽様みたいにしてな」
「ああ、あれをしないとな」
「お前さんどうなっていたかわからないな」
「魚どころかな」
「そこの牛にな」
 漁師は一太を見た、今は元気なものだ。
「お前さん自身もな」
「食われてたかも知れないな」
「少なくとも魚を食われたら駄目だろ」
「ああ、商売あがったりだったよ」
 命あっての物種でもとだ、五兵衛は漁師に答えた。
「本当にな」
「じゃあ何よりだな」
「全くだな、それで今度の魚だけれどな」
「ああ、またいい魚が獲れたからな」
「ちょっと見せてくれるか」
「いいぜ」
 漁師は五兵衛に笑顔で応えた、そうして魚を見せてもらって買ったが。
 都に行く時にふと港の者達が話しているのを聞いた。
「近江と山城の境に山姥が出るらしいな」
「ああ、そうらしいな」
「山道に出てきて旅人から食いものをせびってきて」
「その食いものを全部食ったら旅人まで食う」
「旅商人もそうするらしいな」
「そんなとんでもない山姥だが」
 それがというのだ。
「退治されたらしいぞ」
「そうなのか」
「退治されたのか」
「そうらしい、何でも都におられたばさら大名の佐々木様が聞かれてな」
「ああ、あの方がか」
「あの方が出向かれたのだな」
「そうして一刀の下に切り捨てられて」
 そうしてというのだ。
「退治されたらしい」
「それは何よりだな」
「佐々木様のご活躍だな」
「何でも佐々木様は面白いと思われて行かれたそうだが」
 その山姥のところにというのだ。
「あっという間だったらしい」
「山姥を一太刀か」
「あの方はお強いというが」
「化けものまで倒されるとは」
「見事なものだな」
「全くじゃ」 
 五兵衛はその話を聞いて一人よかったと思った、そのうえで魚を満たした桶を身体の脇の左右にそれぞれ吊るしている一太に声をかけた。そうして都に向かったが彼も他の者ももう山姥に出会うことはなかった。昔のまだ山が今よりずっと深く近くにありそこに今よりも様々なものがいた時代の話である。


牛方山姥   完


              2019・12・12
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