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パウチの砦
第二章

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 奈津美は木々の下の草と草の間に小さな影を見た、最初はそれを北海道にいるシマリスかナキウサギかと思った。
 だがその影は人のものにも見えた、それで理恵のところに行って囁いた。
「いたみたいよ」
「ヒグマが?」
「そうじゃないから」
「ならいいわ」
 理恵はいたと聞いてびくっとなったがヒグマではないと言われ少しほっとした。そのうえで奈津美に言った。
「ヒグマじゃなかったら」
「さっき話したコロボックルみたいな」
「そうなの」
「そう、コロボックルがね」 
 先程話したこの小人がというのだ。
「いたみたいで」
「それでなの」
「そう、ひょっとしたらだけれど」
「それじゃあ」
「この辺り見て回らない?」
「そして」
 そのうえでというのだ。
「コロボックルがいるか」
「それを確かめるのね」
「実際にね」
「じゃあ」 
 二人で話してだ、相手に見付からない様慎重に動きつつコロボックルを探した。だが容易に見付からず。
 三十分程探して見間違いかと思い理恵は奈津美に言った。
「もうね」
「もうっていうと」
「大雪山に入る?」
「ああ、そっちにね」
「そう、それでね」
「今度は山登りね」
「それをして」
 そのうえでというのだ。
「楽しみましょう」
「山登りと景色を」
「それでどうかしら」
「そうね、やっぱりね」 
 奈津美は理恵の提案を聞いてこう言った。
「多分ね」
「見間違いだったっていうのね」
「今はそう思うし」
「じゃあ」
「もう諦めて」
 コロボックルは見間違いシマリスやナキウサギのそれだと思ってというのだ。
「それじゃあね」
「二人で」
 こうしたことを話してだ、共に山に入りそこを登ろうとした。だが少し登ったところでその層雲峡のところからだ。
 声が聞こえてきた、それで奈津美は理恵に言った。
「層雲峡から」
「そっちでよね」
「聞こえるわね」
「ええ」
 理恵も自分の耳に入ってきた声を確認して答えた。
「間違いないわね」
「それじゃあ」
「若しかして」
「コロボックルじゃ」
「そうね、けれどね」
 コロボックルのことをだ、理恵は奈津美に話した。
「人に見られるのを嫌がるから」
「そのこともさっき言ったわね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「ここはね」
「隠れてよね」
「少し降りたところに見える場所があるから」
 その層雲峡をというのだ。
「だからね」
「そこに入って」
「そこからね」
「見ればいいわね」
「そうしましょう」
 こう奈津美に提案した。
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