暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第25話:彼は踏み出さない
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 響が弦十郎宅で修業を行い、クリスが今後の身の振り方について考えを巡らせている頃、二課本部のシミュレーションルーム…………に隣接された休憩所では、ちょっと奇妙な光景が繰り広げられていた。

「あの〜、奏さん?」
「ん〜? 何だ、颯人?」
「えっと〜、何時までこうしてるつもりで?」
「まだ5分も立ってないだろうが。もう暫く休むんだよ。分かったらジッとしてろ怪我人」

 颯人のちょっと困惑した声に、奏はぶっきらぼうな声で答えていた。
 これだけならあまり可笑しな光景ではないのだが、問題はそこではない。

 今颯人は、奏に膝枕されているのだ。普段なら頼んだってやってくれないだろう事に、流石の颯人も困惑していた。

 事の発端は、颯人が無理をしている事が奏にバレた事だった。あの後二課本部のシミュレーションルームに移動して互いに模擬戦を行い鍛錬していた2人だったが、暫く続けている内に颯人の動きに異変が現れ始めたのだ。
 ただしそれは、彼の事を普段からよく見ている奏にしか分からないほどの僅かな異変であった。

 異変に気付いた奏は模擬戦を中断すると颯人の変身を解除させ徹底的に問い詰めた。
 最初は当然彼もシラを切っていたのだが、一瞬の隙を突いてまた彼の傷口の辺りを奏が軽く刺激すると、今度はポーカーフェイスを維持し続けることが出来なくなり無理をしていたことがバレてしまった。

 その瞬間奏はシンフォギアを解除し、颯人を強引に引き摺って近くの休憩所に向かうと有無を言わせずソファーに座った自分の膝の上に颯人の頭を乗せて膝枕で寝かせたのだ。
 勿論颯人も抵抗したのだが、相手が奏だからかそれとも傷口が思っていた以上に痛んだからか、完全に抵抗しきることは出来ず結局は奏の膝枕に厄介になってしまった。

「そんなにアタシの膝枕が不満か?」
「いや、不満は無いんだけどよ…………」
「ならいいじゃないか。折角このアタシが膝枕してやるって言ってんだ。ありがたく横になって休んどけ」

 奏としては、颯人を押さえつける意味でやった事なのだろう。適当なものを枕にして彼を寝かそうとしても、恐らく彼は激しく抵抗するか一瞬の隙を突いて逃げ出すに決まっている。

 あまり無理をされると単純に心配になる。彼はもう十分無理をしているのだから、これからは少し肩の力を抜いてほしいのだ。

 そんな奏の想いが理解出来たからか、颯人はそれ以上の抵抗を諦めソファーと彼女の太腿に己の体重を預けた。
 腿に掛かる負荷が増えた事で彼が本格的に諦めたと分かり奏は満足そうに溜め息を吐いた。

 その溜め息を聞いて、颯人は膝の上から奏を見上げて何故こんなに強引な手に出たのかを訊ねた。

「今日は随分と強引と言うか積極的だな。何かあったのか?」
「別に。ただ、心配
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