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おぢばにおかえり
第五十七話 卒業式その三十六

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「何といっても百貨店がな」
「えっ、あそこの百貨店がなの」
「今は別のお店が一杯入っているんだ」
「建物自体はあるのね」
「けれどな」
 お父さんは私に寂しそうにお話しました。
「その百貨店がなくなったからな」
「寂しくなったのね」
「近鉄沿線はそうなっていってるな」
「近鉄っていえば」 
 阿波野君を思い出しました、あの子はその近鉄を使って通学していてしかも昔は近鉄ファンだったと言っていました。
 けれどそのことは隠してお父さんにこう答えました。
「昔野球のチームもあったわね」
「遊園地も劇団もあったな」
「そうよね」
「もう昔の話だよ」
「そうよね」
「もうあそこにあるのは少ないな」
「寂しくなったのね」
 私もしみじみと思いました。
「そうなったのね」
「ああ、昔は本当にどの駅前も賑やかだったんだ」
「八尾市の方も」
「それが寂れてな」
「そういえば阿波野君も」
 ここでまた彼のことを思い出しました。
「今の近鉄グループは嫌いみたいね」
「その彼もか」
「そんな風なの。今はソフトバンク応援していてオリックスが負けたら」
 このチームについてはです。
「喜んでるし」
「それは元近鉄ファンだな」
「そうみたいなの」
「元近鉄ファンの人はどっちかなんだ」
 お父さんはさらにお話してくれました。
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