暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第23話:魔女と魔法使いの契約
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 魔法使いになった。
 そう透に告げられ、クリスは堪らず困惑して思考が停止してしまっていた。

 それはそうだろう。死んだと思っていた幼馴染が生きていたという事に喜んでいたら、その相手から突拍子もない事を告げられたのだ。
 一度に起こるべき驚愕の出来事の許容量を超えれば思考が停止してしまうのは、人として当然である。

 そして、必然的に次にクリスの口から出てくるのは透の発言に対する否定の言葉であった。

「い、いや……いやいやいやッ!? 魔法使いって、何だよそれ? あり得ないだろそんなのッ!?」

 つい今し方透は離れた所にあるメモ帳とペンをその場から動かずに取り寄せたが、あれにだってきっと何かトリックがある筈だ。でなければ、クリスも知らない未知の聖遺物か何かか。
 フィーネに聞いたが、起動状態の完全聖遺物は歌が必要ないどころか扱いに男女の区別もないとの事。

 なまじ完全聖遺物と言う存在を知ってしまっている為、クリスは透の魔法を完全聖遺物によるもので先程彼がボロボロだったのはその完全聖遺物を狙った何者かが原因だろうと結論付けた。それなら彼女にも納得できるからだ。

 そんなクリスの考えが分かったのか、透は小さく苦笑しつつ右手の指輪を取り換えた。

 これだけで信じてもらえるとは彼自身思っていない。信じられないならば、多様な魔法を使って理解してもらうのみだ。

〈グラビティ、ナーウ〉

 透が別の指輪──グラビティ・ウィザードリング──を付けた右手をハンドオーサーに翳し、その手を今度はクリスに向けて翳すと彼女の体が重力の鎖から解き放たれて緩やかに宙に浮かび上がった。

「えっ? わっ! わわわわっ!?」

 透はクリスを浮かせた状態で室内を軽く一周させた後、ゆっくりと自身の隣に下した。

 突然の空中浮遊に肝を冷やしたクリスは、彼の隣に下ろされるとその豊かな胸元に手を置き安堵から溜め息を吐いた。

 その様子を見て声無く笑う透。
 彼が笑っているのに気付いて、クリスはムッとした顔になりながら文句を口にした。

「んだよ、いきなり宙に浮かされたらびっくりするのは当たり前だろうがッ!?」
「…………!」
「ゴメンて、あのなぁッ!?」

 文句を言ってくるクリスに、透は両手を合わせて謝罪の意を示す。それに更に食って掛かろうとするクリスだったが、不意に口を噤むと次の瞬間吹き出し笑い出した。

 それに釣られて透も笑みを浮かべ、声無く笑い始める。

「あっはははははははっ!」
「……………………!!」

 この瞬間、クリスの心から鬱屈としたものは全て消え去っていた。久しぶりに、本当に久しぶりに心の底から笑えたのだ。

 危なくない程度に行われた悪戯に、腹を立てて文句を言い謝罪され
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