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ウブ
第三章

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 落ち着きを取り戻した、それでだった。
 彼も兼続と共に歩いているとだ、ふと。
 彼の足元に後ろからその大きな蜘蛛が来た、そうして彼の足元にしがみついてきたが彼はここで言った。
「出ました」
「そうだな」
 兼続も見た、夜の暗がりに慣れた目に大きな蜘蛛がいた。それは非常に大きく優に子供位の大きさがある。
 その蜘蛛を自分も見てだ、供の者に告げた。
「下手をすると命を奪われるというが」
「まさか」
「おそらく噛んだ時の毒か血を吸われるなりしてだ」
「そううしてですか」
「精気を奪われるなりしてな」
「命を取られますか」
「そうであろう、しかしだ」
 兼続は自分の言葉を受けて落ち着いている供の者にさらに話した。
「案ずることはない」
「それがしは助かりますか」
「うむ、それでじゃ」
 彼はさらに話した。
「今あやかしに襲われておらぬ方の足からじゃ」
「こちらですか」
 供の者は今右足を襲われている、だが。
 左足は空いている、彼は自分のそちらの足を見て兼続に言った。
「こちらの足をどうせよと」
「そちらの履物、草履をな」
「これをですか」
「肩越しに投げてそなたの母はこれだけ叫ぶのじゃ」
「そうすればいいですか」
「そうじゃ、草履を足の身代わりにしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「投げ捨てよ、よいな」
「わかり申した」
 供の者は兼続の言葉に頷いた、そうしてだった。
 彼の言う通りに左足の草履を肩越しに投げて言われた通りに叫んだ、するとあやかしは消え去ってしまった。
 このことに供の者は驚き兼続に問うた。
「あの、煙の様に」
「消えたな」
「これは一体」
「このあやかしはウブといってな」
 兼続は供の者にあやかしの名も話した。
「死んだ赤子や間引きした子の怨みがなったものらしい」
「間引きですか」
「うむ、そうした赤子や子を野山に捨てるとな」
「あの様なものになりますか」
「そう言われておる」
「ではその正体は怨霊の類ですか」
「そうであろうな、だからじゃ」
 兼続は供の者にさらに話した。
「赤子の声で泣くのじゃ」
「怨念と共に」
「うむ、この度は退散させたが怨念を消さぬ限りな」
 そうしなければというのだ。
「またじゃ」
「出てきますか」
「おそらくな」
「左様でありますか」
「だからな」
 それでというのだ。
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