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黒魔術師松本沙耶香 糸師篇
第十五章

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「貴女は何者かしらとは問わないわ」
「そうですか」
「ええ、私が調べていることに言いたいのね」
「すぐに中止して下さい」
 黒人は紗耶香に礼儀正しいが英語それもアメリカのカルフォルニアの訛りのそれで言ってきた。
「これは警告です」
「その警告を聞けないと言ったら」
「警告を無視された場合の対応は決まっています」
「そういうことね、では」
「静かになってもらいます」
 こう言ってだ、そしてだった。
 男はすっと前に出てそのうえで紗耶香に攻撃を浴びせてきた、先の男の様に指からは攻撃を放って来ない、だが。
 その拳に銀の糸を無数に巻いてそれをグローブの様にしてきた、その拳で紗耶香を殴ってきた。
 紗耶香はその拳を無表情でかわしそうしてから言った。
「グローブではないわね」
「はい、貴女に一撃を浴びせますと」
「その糸が私に襲い掛かるわね」
「そのうえで全身を捕え締め付け」
 そうしてというのだ。
「押し潰してしまいます」
「そうね、蜘蛛の糸の様に」
「はい、では覚悟をして下さい」
「言うわね、攻撃を受ければそうなるなら」
 男の攻撃は続く、続けて放たれるそれはヘビー級の世界ランキングのボクサーの拳と比べても遜色はない。
 だが紗耶香はその攻撃を表情を変えることなく右に左に瞬間移動をしてかわしている、そうしつつ彼に言うのだった。
「受けなければいいのよ」
「簡単な答えと言うべきでしょうか」
「答えはいつも簡単なものよ、そこに辿り着くまでが大変な場合があるけれど」
 それでもというのだ。
「答え自体はいつもそうよ」
「そうですか、ですがこの度は」
「難しいというのね」
「私の攻撃を何時までかわせるか」
「わからないわね、ただ貴方はボクサーとしては凄いかも知れないけれど」
 それでもとだ、紗耶香は話した。
「魔法については知らないわね、所詮は傀儡ね」
「?どういうことですか」
「私がただ攻撃をかわしていたと思うのかしら」
 紗耶香はここで不敵な顔で言った。
「それだけだと思うのかしら」
「どういうことですか?」
「魔法陣は動きつつも書けるのよ」
 今も男の攻撃をかわしている、そのうえでの言葉だった。紗耶香は姿勢も崩さずただ瞬間移動で動いているだけだ。
「今の様にね」
「魔法陣を」
「そう、今書き終わったわ」
 この言葉と共にだった、紗耶香と男が今いるビルの屋上の白いコンクリートの床に。
 魔法陣、黒い西洋の魔術のそれが出て来た、その魔法陣の中に入り。
 男は全身を青い無数の雷に襲われた、その雷の中で身体を激しく痙攣させて雷が消え去ったその時に。
 その場に倒れ込んで動かなくなった、紗耶香は倒れた男から白い糸が出ていき上の方に消え去ったのを見た。それから。
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