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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第四話 遭遇戦
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ルローン方面ではここだけだから、当然アスターテやティアマト、アルレスハイムやパランティアなどの星系まで哨区が広がる。警備艦隊といっても二千隻、有事のためにはまとまった戦力を運用しなくちゃならないから、艦隊戦力の半減している第2分艦隊を哨戒専任に当てているのだろう。哨戒には基地の作れそうな無人惑星や衛星の臨検も含まれるから、陸戦隊が必要なのも頷ける。哨戒はとても大事だ。
合理的と言えば合理的、リンチ少将、中々やるじゃないか。原作では有能な軍人、という書き方をされていたからな。にしても彼の率いる本隊と第1、第3分艦隊合わせても千六百隻。最前線の警備がこの戦力じゃ、リンチ少将も頭が痛いだろう。

 「にしても、なんで中尉の所に文句が舞い込むんです?」
「…え?だってそれは……あんたたち聞いてないの?」
「我々は着任初日ですよ」
「あ…そうだったわね。そりゃ知らないか」
そこまで言うとカヴァッリ中尉はグラスの中身を一気に飲み干した。…六杯目…。
「…あたしの一番上の姉さんがリンチ少将の奥さんなのよ」
「…え?」
「少将から見たら義理の妹ね。だから艦隊司令部の文句はみんなあたしの所にくるの。皆、面と向かって少将の文句言えないから。…仕方ないとは思うわよ?でも、身内だからってあたしに言う事なくない?」



4月15日20:30 レストラン「サンタモニカ」 マイケル・ダグラス

 ヤマトがずっとカヴァッリ中尉の愚痴を聞かされている。
“ちょっと出来る男風”に質問なんかしたのがいけなかった。
根拠地隊に行きたい、なんてオットーには言ったが、こいつらと一緒なら配置先なんてどこでもよかったんだ。
配置先の状況なんて、行けばどうにかなるもんだ。
しかしこれは…初日から拷問だな。いや、ヤマトの方が中尉に尋問しているのか?
オットーは個人携帯端末(スマートフォン)を片手に酒を飲んでいる。俺の話にも生返事な有り様だ。
ぐぬぬ…このままではエル・ファシル初日からミソが付いてしまう。
カヴァッリ中尉は可愛い。だけど飲む度にこの状況では色々と萎えると言うものだ。…標的を変えよう。
…あの子にしよう。ウエイトレスに声をかけるのはROE(交戦規定)違反というものだが、他に女性客が居ないこの状況では仕方がない。

 「ねえ、お嬢さん」
「はい?何でしょうか。追加のご注文ですか?」
「いや…追加には追加なんだけど」
「?」
「以前から思っていたんだけど、俺が注文したいのはキミなんだ」
「…えっ?」
フッ。決まった。やっと意味がのみこめたのか、真っ赤な顔をしている。反応も可愛い、遭遇戦としては上々だ。
「困ります、お客さん」
「まあまあ。…この状況を見てよ。上官の愚痴に付き合わされる部下、生返事で黙々と呑みに走る奴…俺はどうした
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