暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第一話 ハイネセンに生まれて
[2/3]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
かい?さっきも言った通り、君の成績なら合格すると思うよ」
「いえ、下士官術科学校に進みたいと思います」





783年5月21日、ハイネセン、ラクーンシティ18番街、ウィンチェスター邸


 結局、親父は二階級特進して少尉になった。
だけど、遺族年金の額は兵曹長の俸給の額のままで支給される。遺族年金まで2階級特進なんて事になったら同盟は破産してしまう。すでに遺族年金の額は国防費の二割を占めているのだ。
長い戦争が続いている、政府の懐事情は知れている。年金だって貰えるだけマシ、文句なんて言ったらそれこそ非国民扱いだ。

 母さんは職を探し始めた。会計士の資格を持っていたから、後方勤務部の嘱託として働く事になった。
軍属というやつだ。
母さん自身は2度と軍には関わらない気でいたけど、遺族が軍属になった場合、遺族年金の認定が優先的に受けられるとなれば仕方がない。
だが、年金と言っても遺族年金は最初の二年間が戦死者本人の生前の階級の俸給の満額、三年目からは七割、五年目からは五割、七年目からは三割の額しか出ない。しかも戦死者の生前の階級で定年の年数になると年金はうち切られるのだ。
到底遺族年金だけでは生活出来ない。
てっとり早く家計を安定させるには軍属になるしか手はないが、誰もが軍属になれるわけではない。
ウチはまだマシな方だ。軍属でない場合、軍は公式には認めていないが遺族年金の認定には早くて数年かかる事がある。
軍人の遺族の子弟婦女子が軍隊に入るのにはこういう裏がある。
皆が好んで入隊する訳ではない。だが家計を助けるには給料の安定している軍隊に入るのが一番なのだ。





784年3月27日、ハイネセン、ラクーンシティ18番街、ウィンチェスター邸


 「じゃあ、行ってくるね、母さん。マリー、母さんの言うことちゃんと聞くんだぞ」
「…頑張りなさい。休暇の時はちゃんと戻っておいで」
「お兄ちゃん、ちゃんと戻ってきてね」
「分かってるよ、二人とも。…じゃあね」




784年4月1日、ハイネセン、ハイネセンポリス、自由惑星同盟軍下士官術科学校


 「私は、我が国の自由と独立を守る自由惑星同盟軍人としての使命を自覚し、国家に忠誠を誓い…」
入隊式が終わった。
下士官術科学校を選んだのにはちゃんと理由がある。
まず、学費がかからない。そして、入学試験のレベルは士官学校よりは当然落ちる。
でも士官学校より落ちるというだけで、倍率は当然高いし簡単に合格するという訳でもないが。
これが一番のポイントなんだが、給料がちゃんと出るのだ。
士官学校生には階級もなく、給料も初任兵の俸給の半分程度の学生手当しかないが、下士官術科学校はちゃんと階級があって、給料も出る。入学時は兵長、二年
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ