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レーヴァティン
第百四十話 空の前哨戦その一

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               第百四十話  空の前哨戦
 久志達は偵察の船や空船を周囲に常に何隻も出していた、そうして警戒を怠らなかったがその中で。
 敵艦隊がセビーリャ沖からさして動いていないことを知った、久志はそのことを確認し机の上に湖図を開きつつ言った。
「敵は決戦を考えているな」
「奇襲もあるかと思いましたが」
 源三が応えた。
「しかしですね」
「ああ、それがな」
「決戦を挑みますか」
「こっちが来るのを待ってな」
「セビーリャ沖は敵の制湖権内にあります」
「向こうにとっては庭だな」
「地の利いえ湖の利は彼等にあります」
 即ち敵の方にというのだ。
「そちらに」
「そうだよな」
「つまりは」
「ああ、俺達は数や軍船の質で勝っていてもな」
「湖の利はありません」
「そうなんだよな」
「あの辺りは潮流が複雑だ」
 芳直が言ってきた。
「寒流と暖流がぶつかり合っていてな」
「潮の流れがややこしいか」
「しかも浅瀬も多い」
「それじゃあな」
「下手に入るとだ」
 そのセビーリャ沖にというのだ。
「潮の流れに取られてだ」
「浅瀬で座礁してか」
「厄介なことになる」
「大軍で迷路に入る様なものか」
「そやからな」 
 今度は仲間になるまではそのセビーリャにいた美奈代が言ってきた。
「あそこの港に船で入るルートは限られてるんや」
「そしてそのルート、航路にか」
「敵の船団がおる」
「そこに来たところを迎え撃ってか」
「戦うつもりや」
「それで数の少なさや軍船の質の差を補うか」
「そのつもりやろな」
 こう久志に話した。
「敵は」
「そういうことか」
「それでな、芳直っちの言う通りな」
「芳直っちかよ」
「仇名としてええやろ」
「何かイメージじゃねえな」
 久志の思うところそうだというのだ。
「どうも」
「そやろか」
「ああ、しかし潮流や浅瀬のことをか」
「敵は知っている」
 芳直は再び話した。
「だからだ、ここはだ」
「奇襲を仕掛けずにか」
「決戦を挑むつもりだ」
「自分が知っている場所で戦って勝つ考えか」
「そういうことだ、だが」
「それでもっていうんだな」
「俺っちに考えがある」
 芳直は久志に強い声で話した。
「今この時期ならな」
「この時期?」
「この時期あの辺りの潮流はどれもかなり激しいが」
 それでもとだ、芳直は久志に話した。
「風も強い、その風に乗ってだ」
「そうして船を動かすんだな」
「そうだ、風を使う」 
 久志にまた言った。
「ここはな」
「帆に風を乗せてか」
「オールよりもな」
 そちらを使ってというのだ。
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