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包青天
第三章

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「この通りかなりありますので」
「存分にお楽しみ下さい」
「残ったものは氷室に入られてです」
「また楽しめばよいかと」
「ここまであるとは。これだけあれば」
 まさにとだ、包拯も言うのだった。
「かなり涼しめる」
「全ては万歳翁のお心遣いですな」
「ではこれより」
「氷で涼を取られますな」
「そうしようぞ、しかしお主達よくそれだけの氷をここまで運んでくれた」 
 包拯は官吏達も労わった、確かに厳格極まる男であるが部下達への労わりや思いやりも忘れない男だ。このことからも慕われているのだ。
 それでだ、彼等にも言うのだった。
「礼を言う」
「いえいえ、これも当然のこと」
「お気にされないで下さい」
「ではです」
「氷を」
「楽しませてもらおう、しかし」
 ここでだ、ふとだった。
 包拯はふと気付いた、そうして官吏達に言った。
「永進殿が何で殺されたかわかった」
「といいますと」
「それは」
「再び元輔殿の取り調べを行う」
 こう言ってだった、氷は氷室に収めさせてだった。
 包拯は元輔、如何にもやや面長で軽薄な感じに満ち嫌味さと卑しさを感じさせる顔立ちの宦官である彼に対して厳粛な顔で言った。
「元輔殿は氷が好きですな」
「それが何か」
「元輔殿のお屋敷には氷室があり」
 賄賂によって贅沢を楽しんでいる彼の屋敷にはそうした場所もあるのだ、そこで夏には氷で涼も楽しんでいるのだ。
「そうして多くの氷を入れていますが」
「ですからそれが何か」
 元輔はふんぞり返って馬鹿にしきった顔で包拯に応えた。
「私の潔白をまだ疑いまするか」
「貴方が永進殿を殺したとはっきりしましたので」
「ほう、何処にその証拠が」
 元輔は包拯の今の言葉に内心怯んだが何とか表面ではそれを隠して応えた。
「あるのですか」
「氷を使いましたな」
「氷を」
「はい、貴方は氷で永進殿の頭の後ろを殴りました」
 そうしたというのだ。
「あの方が急中で一人でおられる時にご自身のお屋敷から氷で作った棍棒を急いで運ばせて」
「そうしてと」
 元輔は怯みを顔に出しつつもさらにシラを切ろうちした。
「私が」
「そうです、その棒を持ってそっと永進殿の後ろに近寄り」
 そしてというのだ。
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