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曇天に哭く修羅
第一部
片鱗
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時に全力で潰しに来ることなど想像もしていなかった。

このままだとジリ貧。

物量で押し切られる。


(負けたくない)

『門が』

(ここまで来て)

『少しだけ』

(認めたくない)

『本当に』

(何か手はないのか)

『少しだけ』

(負けたく、ない……!)

『開く』


紫闇の幻聴が何かを知らせるように告げた。

それにどんな意味が有ったのかは解らない。

しかし明らかな異変。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……あれ?」


目を(つぶ)ってクリスの攻撃を耐えていた紫闇は急に静寂となったことにそっと目を開いて確認すると呆然となってしまう。


(何で攻撃を止めたのかと思えば)


そういうわけではない。


「時間が止まってる……のか?」


紫闇が今まで何度か体験した感覚と同じだが今回は自分の意志で動けるようだ。

クリスの攻撃は空中で静止している。

弾頭も、光線も、起きた爆発や飛び散る破片も固定されたようにピクリともしなかった。

紫闇はそれらを躱してクリスの元へ。


「攻撃しても良いのかこれ。まあ戦ってるんだから許されるだろうけどさ」


貫手で喉仏を潰す。

自身の手が彼女の脛椎(けいつい)へ触れると時が針を進め、クリスは白目を剥き失神。

彼女の【古神旧印(エルダーサイン)】が光の筋として紫闇に入ると彼の刻印が半分まで完成。

左手のそれを感慨深く見詰める。

試合時間は1ラウンド10秒。

会場の人間は殆ど何が起こったのか解っていないので拍手も歓声も焔とレイア以外では一切起こることは無く、紫闇もそれを納得していた。

彼自身釈然とせず、勝者でも敗者でもない複雑な気持ちで舞台を去っていく。

しかし紫闇の闘志が()えることは無く、どんどん燃え盛って先の相手を見据える。


「この際どうしてクリスに勝てたのかなんて理由はどうでも良い。優勝っていう土産を持って《江神春斗》への挑戦権を得るまであと一つ」

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