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おぢばにおかえり
第五十六話 卒業式の前その十八

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「阿波野君がね」
「あの子が?」
「そうなの。この前先輩と三人で神殿の前でお会いして。先輩が私に自分はこんな悪いことをしたけれど私にはしないでってお話してくれたら」
 先輩の過去のことはよく知らないです、何か一年生の時に色々あって凄く反省しておられるのはわかりますけれど。
「そんなことする方が悪いって言ったのよ」
「そうだったのね」
「それで怒ったのよ」
 丁度私達が今見ている神殿に入る階段の前で、でした。
「あの場所でね」
「あそこでなの」
「階段の前でね」
 丁度私達は南の礼拝堂の前に来ていました、そこから見ています、
「先輩だって反省しておられたのに」
「その娘が何をしたかお母さん知らないけれど」
「する方が悪いとかないわよね」
「その娘が何をしたかによるわね」
 それ次第だというのです。
「人を酷く傷付けたりしたのならね」
「阿波野君がそう言うこともなの?」
「それでもきつ過ぎると思うけれどね」
 阿波野君がというのです。
「あの子もそんな一面があるのね」
「ううん、そういえば阿波野君は」
 今考えるとです。
「きつく怒ることないわね」
「そうした子よね」
「ええ、普段はね」
 いつもにこにこしています、一年生の娘達に聞いてもクラスや学年の間でもいつもにこにこしていて明るい子とのことです。
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