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上座
第四章

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「おっちゃんがいていいのかよ」
「そんなの誰でもわかるだろ」
「そうだよな、何で平気でやってるんだよ」
「そうしたこともわからないんだよ」
「そんな人だってことか」
「ああ、何もかもな」
「宗教ってこういうことも大事だろ」
 悠一は叔父が宗派の組織の仕組みばかり批判していることを知っていた、もっと言えば彼が宗派の教義について何も学ばず働きぶりもいい加減で偉そうなことばかり言っているのも知っている。信仰心も向上心もないことに。
「それでもか」
「ああなんだよ」
「俺わかったぜ」
 おばちゃん達の横でおばちゃん達に笑顔で話し掛けている叔父を見据えて言った。
「ああした人はな」
「駄目だって思うな」
「どうにもならないな」
 軽蔑、この上なくその感情が出た言葉だった。
「それでああした人にはな」
「ならないな」
「絶対にな」
 こう言うのだった、そしてだった。
 叔父を葬式が終わる時まで冷たい目で見た、それで家に帰ってだった。
 彼の日常生活に戻った、その中で。
 宗派の悪口ばかり言っていた叔父が遂にその場からいられなくなって夜逃げして行方不明になったと聞いた。だが。
 この時はもう叔父を甘やかしていた祖母はこの世におらず祖父も老人ホームに入っていた、家にいるのは悠一と高校を卒業してすぐに就職した彼の弟と両親だけがいた。そうして。
 家の誰もが叔父はもう家に入れないと決めた、そう決意して親戚中にも家に入れない様に話して注意していたが。
 彼は親戚にも宗派にも顔を一切出さず今度こそ完全に行方不明になった、その数年後で悠一は宗派の催しで叔父の話を聞いたが。
 それはまだ彼が宗派にいる時のことだったが思わずこう言った。
「えっ、あれまだ生きてるんですか?」
 こう言った、だがそれが数年前のことだと聞いてほっとしてだった。心の底からもう死んでいて欲しいと思った。叔父がしたこれまでのこととりわけお葬式の上座に上がっていたことを思い出しつつ心の底から思った。それから彼が叔父と会うことは二度となかった。死んだかどうかはわからないがそれをよしと思って彼の人生を過ごした。


上座   完


                  2019・7・10
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