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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十六話 六芒郭攻略戦(二)
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皇紀五百六十八年 十月八日 午前第七刻 虎城 姫虎演習場 
独立混成第十四聯隊 聯隊長 馬堂豊久大佐 


六芒郭より西、皇都を守る最後の要害、虎城山地を貫く三大街道の一つ、内王道。

「”気高く美しい我らが姫君、ユーリアよ”か」
「なんのことです?」「本領兵が謳っていたらしい、六芒郭からの報告にあった」

「どうでも良い事ではありませんか?」
 次席副官のような扱いになっている上砂少尉が銀板を拭いながら言った。
「違うよ上砂、連中の士気がユーリア殿下に向いているって事がわかる」
 豊久は目蓋を揉みながら報告書を米山から受け取った。

「剣虎兵大隊が三個か‥‥いやはやまったく。投資される側にもなってほしいよ」

「大隊単位では精兵ですが、旅団規模の運用なんて史上初ですからな。
龍口湾で二個大隊を使いましたのであの時を参考に改良して運用演習をしておりますが」
 首席幕僚の大辺が編成表を眺めて肩をすくめた。こうした発想を投入してくるのは軍政家でありながら前線を眺めつづけた駒城保胤ならではだろう、と思う。
 とにかく一ヶ月でものにしなくてはならない、というのはなかなか面倒である。

「これだけの規模だ、上手くぶつければ一時的にとはいえ1個師団を黙らせることができる。だがうまくいかなければ無駄死にだ。
部隊を率いるのは重荷だよ、出世を喜ぶには有事の将校という稼業は――」
 ほう、と口にできない言葉を煙にして吐き出した。

「とはいえ約束したのでしょう?」
 
「ま、そういう事だな、弱気になるわけにもいかん。若殿様が任せてくれた仕事だ。やり遂げてみせるとしよう」


「聯隊長殿!緊急です!!」
  導術室から伝令が飛び出した。
「何事だ!」「六芒郭において〈帝国〉軍が総攻撃を始めました!!」

 豊久は一瞬、目を伏せるがすぐにふてぶてしく口元を歪めて立ち上がった。
「司令部に連絡、これから向かう!大辺!米山!準備してくれ」
 上砂が目を閉じる。聯隊本部は常に増した喧騒に包まれた。



同日 午前第九刻 六芒郭 南東突角堡 南砲塁座
夏川孝憲中尉



 龍兵が金切り声を上げて南突角堡へと殺到する。二百発の炸裂弾の轟音が要塞を揺らす。
 東方辺境領鎮定軍――正確に言うのであれば本領軍である第二軍団が計画した総攻撃の号令であった。
 

「砲撃用意、別命あるまで準備を整えたら待機」
 幾度かの攻勢を経験している夏川中尉は依然と同じように命令を発した。この異常な状況に十七歳にして慣れている事は少なくともこの場ではたいした才能といってよい。

 だがその声はこれまでにない砲の群れの猛る声に比べると”いつも以上”にか、怯えの色が濃くにじむ。
 無理もない、二百斤の攻城砲弾
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