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渦巻く滄海 紅き空 【下】
三十一 接触
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ウ様のご厚意ですよ」

鬼童丸・右近/左近をナルに同行させた本当の理由。
それは、生きた手土産を大蛇丸に持参しただけだと、何の悪びれもなく、あっさり答えたサイに、大蛇丸は鼻で嗤った。


「なるほどねぇ…あの耄碌じじいの考えそうなことね…」

ただの捨て駒として扱われ、結局カブトによって殺された鬼童丸・右近/左近を、大蛇丸は若干憐れに思った。
だがそれも一瞬で、サイの話に耳を傾ける。

ダンゾウからの伝言を淡々と述べたサイから封筒を受け取った大蛇丸は、「ふぅん…」と愉快げに双眸を細めた。
サイの背後から近づく気配を知りながら、「なかなか興味深い話を聞かせてもらったわ」と答える。
同時に、サイにクナイを突き付けたカブトを、大蛇丸は止めた。


「およしなさい、カブト。その子も一緒に連れて行くわ」

大蛇丸の視線を受け、カブトは渋々サイからクナイを離した。
サイ・カブト・大蛇丸が立ち去った場所を遠目から確認していたヤマトの木分身は、顔を顰める。


オリジナルであるヤマトに報告すると、指先に結わえた蜘蛛の糸を木分身はじっと見下ろした。
ダンゾウの捨て駒にされ、みすみす大蛇丸へ殺されに行った鬼童丸と右近/左近の顔を思い浮かべる。


「鬼童丸の置き土産か…」


カブトに張り付けた鬼童丸の蜘蛛の糸。
強靭、且つ、目に捉えにくい糸を辿りながら、木分身は大蛇丸・カブト・サイの後を尾行し始めた。
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