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運命
第五章

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「美味しいです」
「そうだな」
「これは幾らでも食べられますね」
「いいものだ、ではだ」
 そのマカロニを食べつつ言うのだった。
「デザートの後でな」
「シロップをたっぷり利かせたケーキですね」
「それを食べてだ、トカイも飲み終えてだ」
 そうしてというのだ。
「その後でだ」
「作曲ですね」
「夕食までそれに専念しよう」
「そうされますか」
「私はこの命が尽きるまで作曲するが」
 自分のこの考えについても話すのだった。
「それもだ」
「運命ですか」
「私のな、それが私の運命ならだ」
 ベートーベンはさらに言った。
「作曲を続けよう」
「そうされますか」
「これからもな」
 こう言って実際にだった、ベートーベンはこの時から夜まで作曲に専念した。そして夕食の時は機嫌は普通に戻っていた。
 その彼を見て甥は使用人達に話した。
「よかったよ」
「全くでね」
「旦那様が機嫌を戻されて」
「何よりです」
「本当に」
「叔父さんはああした人だからね」
 彼のその性格から言うのだった。
「それでだよ」
「何かとですね」
「困りますね」
「癇癪持ちで気難しくてね」
 甥は叔父のその性格について細かいところまで話した。
「尊大で頑迷でね」
「その四つがどれもかなりのもので」
「しかもすぐにものを投げられます」
「些細なことで怒られて」
「困った人だよ、僕もね」
 甥はここで自分のことも話した。
「子供の頃から何かと言われたよ」
「左様でしたね」
「カール様も何かとでしたね」
「叱られていましたね」
「些細なことで」
「うん、随分言われたよ」
 厳しいというよりかは癇癪持ちで気難しい叔父にだ。
「何かとね」
「カール様ご自身も」
「何かと言われて」
「大変でしたね」
「これまで」
「だからね、叔父さんのことはわかってるから」
 甥、それも養子としてだ。
「こうした時はああしてね」
「お話を聞くことですね」
「好物を持って行って」
「そうするのがいいですね」
「それがいいんだ、しかし」
 ここで甥はこんなことも言った。
「叔父さんも思えば気の毒かな」
「そう言われますか」
「あの方について」
「そうしたことも」
「うん、耳のこともあるし今も結婚を望まれているけれど」
 家庭、それを持ちたいと思っているのだ。それも心から。
「それも適わないでね」
「そうですね、思えば」
「あの方は家庭を欲しがっていますが」
「それでもですね」
「それも持てなくてね」
 それでというのだ。
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