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とっちゃ、やだ。
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 ――珍しいものだ。少々体調が優れずともレイシフトをこなすマスターが。基本的にミーティングやブリーフィングの開始時間10分前には部屋に居る、そんなマスターがだ。

「事前連絡なし、かつ遅刻ねぇ……?」

 青い髪を靡かせ、サーヴァントは主の元へ足を運んでいた。既に数回、内線を鳴らしたが無反応だったとのこと。付き合いの長い自分ならば、事を荒立てずに様子を伺えるだろうと白羽の矢が立ったのである。
 この間、マスター抜きで次の特異点に関しての会議は進められている。死んじゃいないだろうが、と縁起でもないことを考えながらマイルームのドアを潜った。入室後すぐ目に入ったベッドにはこんもりとした山。注意深く観察せずともそれが大きく上下しているのが分かる。呆れながらもまずは一言、声を掛けようと移動して――

「こっちまで力抜けてくんなぁ」

 覗き込んだマスターの表情は、それはそれは緩みきっていて。いつもの笑顔とは違う、幸せそうなものだった。今日の予定は打ち合わせだけだと聞いていたため、出来るならばこのまま寝かせておいてやりたい気持ちも湧いてきたが、ここは心を鬼にすべきである。キャスターは、杖を具現化させると躊躇うことなく振り下ろした。

「う、うん……いたいー」
「おら、起きろー? ねぼすけマスターって呼ぶぞー」

 勿論、力は加減している。現にふやけてはいるが返事もあった、さしたるダメージは受けていまい。が、当の本人はもぞもぞと身体の向きを変えただけで覚醒には至らなかったようだ。今度こそ大きく溜息を吐き出すと、男は更なる実力行使に出た。そう、布団を引き剥がすだけに留まらず、抱え込んでいた枕をも没収したのである。

「んー……、きゃすたー?」

 ようやく寝ぼけ眼と目が合う。随分と気の抜けた声で己を呼びながら起き上がるマスターに一先ず安堵の息が漏れた。手間かけさせやがって。まだまだ子供だな、と肩を竦めながら急かそうと口を開いた瞬間。腹部に温かく柔らかい何かが触れ、続けて腰に細いものが巻き付いた。

「……おい、オレは湯たんぽじゃねえぞ」

 まだ夢の中にでも居るのか、ぐずるように額を擦り付けては意味のない声を発している。これは少々、面倒なことになった。このまま気の済むまで放っておくか、はたまた強制的に目を覚まさせるか。どうするかな。

「――」
「あ? なんだって?」

 ピタと動きが止まった。正直なところ、髪の毛が当たって奇妙な感覚がしていたので、それが無くなったことにほっと胸を撫で下ろす。そして、何か囁いているマスターの言葉を拾おうと、頭を下げ耳を済ます。問い返せば、今度ははっきりと聞こえたのは。

「おいおい待てよ。こいつまだガキだぞ……? 知的に行こうぜオレ!」

 これ以上は、オレの沽券に関わるので
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