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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十一話 馬堂家の人々
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【第二部まつりごとの季節】
〈皇国〉は島国であることと長く続いた内乱によってツァルラント大陸文明から一定の距離を置いてきた新興国である。
現在は皇主を名目上の君主として、五つの大貴族と衆民によって構成されている。
良馬の産地である駒州の地においては、豪農と陸運の支配者たちを取りまとめる駒城が、
林業資源地帯と職能集団を取りまとめていた守原家と宮野木家が、西領の最大港湾都市と皇都への航路を支配する海峡を支配を確固たるものとした西原家が
時には叛乱や寡頭制への分権化などの紆余曲折を経て、〈皇国〉有数の名家へとなった。
そして太平の四半世紀を経てそして最後にして最大の内戦後の土地の復興を成し遂げた安東家もその地位に実が伴おうとしていた。

一方敗北した諸将家の土地はこの国の主流から長く取り残されていたが、皇家の自由化政策によって勢力を増大した衆民たちが勃興、
経済格差とそれを克服しようとする社会運動の狂乱を呼び起こしていた。
我々の後世の者は将家と衆民を単純な二項対立にして自身の政治的色彩の演出に落とし込もうとするのだろうが
その実態として将家と衆民は複雑怪奇かつ密接に、迂遠に、間接的に、直接的に、結びついていた。
そしてそこに降ってわいたのが〈帝国〉軍による侵攻が恐るべき怪物を呼び起こすことを
私は知識として知っていたが、実感をするのはまだ先のことであった。

――”転生者”馬堂豊久の覚書


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