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ピンクのモーツァルト
第五章
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「今の私は」
「そうなのだね」
「それでこれからも」
「その服、そしてピンク色をだね」
「楽しんでいこうと思っています」
「誰もピンク色を使ってはならない」
 皇帝は玉座から楽しそうに述べた。
「我が国にはそうした法律はないよ」
「教会もそう教えていません」
「ならだね」
「私も気にすることなく」 
 人の目をというのだ。
「着まして」
「これからもだね」
「やっていきます」
「わかったよ、ではね」
「その様にですね」
「朕からは言うことはない」
 太鼓判、それを押した言葉だった。
「最初からね」
「有り難いお言葉、それでは」
「その様にね」
「生きていきます」
 モーツァルトは皇帝に恭しく頭を下げてだった、そのうえで。
 皇帝の前をにこやかに去り自宅に戻り作曲にかかった、この話を聞いて宮廷の者達は今度はこんなことを言った。
「確かに奇抜だが」
「モーツァルト殿らしいか」
「逆にあの御仁が普通にしていると」
「何か怖い気がしますな」
「普通のモーツァルト殿なぞ」
「悪意に満ちたモーツァルト殿程合いませぬ」
「あの御仁は邪気のない人ですが」
 このことは事実だが、というのだ。
「それと共に、ですからな」
「そう、奇抜である」
「奇矯な御仁でもあります」
「その奇抜さがありませんと」
「やはりモーツァルト殿でありませんな」
「ですな、陛下は最初からわかっておられた」
 ヨーゼフ二世、彼はというのだ。
「そういうことですな」
「いや、不明なのは我々でした」
「あの服に度肝を抜かれ」
 ピンクのその服にというのだ。
「それで思考を停止してしまった」
「全く恥じるばかりです」
「あの御仁には奇抜も当然」
「それを不思議に思ってはなりませんな」
「全くです」
「以後こうしたことがない様にしなければ」
 こう言うのだった、そうして。
 彼等は以後モーツァルトの服装にこれこそモーツァルトだと思う様になった。その話を聞いてマリア=テレジアもだった。
 周りの侍女達にくすりと笑って述べた。
「彼は何時までも子供ですね」
「子供ですか」
「そうなのですか」
「明るく邪気がなく」
 女帝はさらに話した。
「悪戯と下品な冗談が好きで」
「奇抜なことを行う」
「そうした方ですね」
「そうです、確かに作法はなっていませんが」
 宮廷に出入りする者としては到底、というのだ。
「ですがああでなくてはです」
「あの方ではない」
「陛下もそう言われるのですね」
「そうです、これからも」
 微笑んでいた、女帝も。
「あの様にいてそうして」
「名曲を作って欲しい」
「それが陛下の願いですね」
「心からそう願っています、では」
 これよりとだ、女帝は周りに告げ
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