第五百四十一話 研究室に戻ってその六
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「実に美しいのう」
「青と緑でな」
「そこに白もあってね」
「青は海でな」
「緑は大陸で」
「白は雲」
「その三つでだね」
二匹も神戸を見て言う。
「奇麗だね」
「本当にな」
「帰りにそれを見るとな」
実にとだ、博士はまた言った。
「最後の楽しみになるわ」
「旅のだね」
タロが言ってきた。
「それのだね」
「うむ、まさにな」
「やっぱりそうだね」
「行きは暫しの別れを告げて」
心の中でだ、そうするのだ。
「そしてじゃ」
「帰る時は」
「つまり今はな」
どうかというと。
「帰ってきたその時をな」
「喜ぶ時だね」
「うむ、しかしじゃ」
「しかし?」
「旅は家の玄関を潜るまでじゃ」
その時までというのだ。
「その時までが旅行でじゃ」
「まだ僕達は旅行をしているんだね」
「うむ、そしてじゃ」
「そして?」
「安心も出来ん」
「ああ、旅の途中だから」
「旅行は家に帰る間際が一番事故が多い」
博士はタロにこうも話した。
「まさに今の様なな」
「こうした時こそだね」
「家に帰ると気を抜いてな」
「そこでだね」
「事故を起こしてな」
そしてというのだ。
「無念となるのじゃ」
「だからあえてだね」
「こうした時こそじゃ」
家に帰る間際こそというのだ。
「気を引き締めるのじゃ」
「そうしないと駄目なんだね」
「何度も言うが家の玄関、わし等は研究所じゃが」
「研究所の門を潜るまでだね」
「気を抜いてはいかん、気を抜けば」
その時はというと。
「さっきも言ったが」
「事故を起こしてしまうんだね」
「その元だからじゃ」
それでというのだ。
「気を抜いては駄目じゃ」
「じゃあ今はね」
「気を引き締める、若しそれが疲れるなら」
博士はこうも言った。
「事前に寝ておくことじゃ」
「おいらそうしたぜ」
実際にとだ、ライゾウは博士に答えた。
「今だってな」
「わしとの今の話の前はじゃな」
「ああ、そうしてな」
そのうえでというのだ。
「今はすっきりしてるぜ」
「左様、少しでも寝るとな」
「緊張にもいいんだな」
「気を休めるといざという時にもじゃ」
つまり緊張している時にもというのだ。
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