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漢の意地
第三章

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「勇気はあるが」
「それでもだな」
「布陣は悪い」
「あれで我等と戦うつもりか」
「この元軍に」
 騎兵を中心とした自分隊にというのだ。
「あの様な兵では無理だ」
「勇気だけで勝てるものか」
「率いているのは文天祥だったな」
「宋を背負って立つ人材というが」
「しかしだ」
「軍の采配はよくない様だな」
「あれでは勝てる」 
 こう言ってだった、元軍の者達は文天祥の率いている軍勢と戦い勝った。
 文天祥は敗れた、だがそれでも生き残った者達に言った。
「私は破れた、だが」
「それでもですね」
「戦われますね」
「これからも」
「宋の為に」
「そうされますね」
「私はこの命がある限り宋の為に戦う」
 そう決めているからだというのだ。
「だからだ」
「これからもですね」
「今は破れましたが」
「それでも」
「これからも」
「そうする、その私についてきてくれるなら」
 それならというのだ。
「私は有り難く思う」
「文様のそのお心があれば」
「どうしてことが果たせぬでしょうか」
「我等文様のそのお心を知りました」
「ならば共に」
「そう言ってくれるか、では宋の為に戦おうぞ」
 文天祥は兵達のその言葉に涙を流した、そのうえで彼等と共にこれからも戦うことを誓った。
 文天祥は志を共にする者達を連れて戦っていった、だが宋は日増しに元に追い詰められていき彼自身勝つことはなかった。
 そのことを聞いてだ、フビライは元の都である大都で言った。
「あの者は戦は駄目か」
「その様です」
「ただ勇気があるだけで」
「采配はなっていないそうです」
「布陣もよくなく」
「将帥としてはです」
 元の将軍達もフビライに話した。
「負けてばかりです」
「元々生粋の文官です」
「政はよく文も秀でているそうですが」
「それでもです」
「そうか、しかしだ」
 それでもとだ、フビライは文天祥が戦に弱いと聞いてもあらためて言った。
「朕はあの者を将帥として用いるつもりはない」
「政ですね」
「そして文ですね」
「そちらで用いますね」
「丞相としてだ」
 即ち宰相に用いてというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「元の為に働いてもらう」
「この国と民の為に」
「何よりも万歳老の為に」
「そうしてもらう」
 こう言うのだった。
「だからな」
「戦が不得手であることは、ですか」
「構いませんか」
「そのことは」
「そうだ、それにさらに気に入った」
 ここでフビライは笑った、それで言うのだった。
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