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ヘドロ
第四章

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「だからな」
「これからもですか」
「ここは見ていけばいいさ」
「そうですか」
「そうしたら俺が言った言葉の意味もわかるさ」
 達也の言葉には余裕があった。
「本当にな」
「それじゃあ」
「これからもな、こうした形でな」
「ここを見ていけばいいですか」
「そういうことだよ」 
 達也はこう言うだけだった、そうしてだった。
 唯和は達也の言う通りに見ているだけだった、そのマンションを。すると次第にだった。
 人がいなくなった、それは何故かというと。
「あの、マンションの中で」
「殺し合ってるな」
「警察何もしないんですね」
「だから入ってもな」
 マンションの中にというのだ。
「どうしようもないだろ」
「はい、それこそマンション全員犯罪者で」
「それこそ何とかしようと思ったらな」
 達也も唯和に話した。
「あそこ全部一掃しないといけないからな」
「だからですね」
「警察もな」
「手を出さないんですね」
「狂犬が二匹いたらな」
 達也はこうも言った。
「わかるだろ」
「その狂犬が自然と争うなら」
「ほったらかしにするだろ」
「はい、確かに」
 唯和もその理屈はわかって達也に頷いて答えた。
「もうその場合は」
「狂犬は狂犬だからな」
「見境なく噛み合って」
「それで殺し合うだろ」
「自然と」
「だからな」
 それでというのだ。
「狂犬が殺し合うのを待ってな」
「片方が死んで」
「もう片方もボロボロになってな」
「じきに死にますね」
「そうなるのを待つのがな」
「あそこへの警察の考えですか」
「外には出さないんだ」
 マンションの外にだ。
「誰も近寄らないしな」
「ならですね」
「連中は殺し合わせてな」
 そしてというのだ。
「放っておいてるんだよ」
「そうですね、サイコ殺人鬼もいるみたいですし」
「奴等は殺し合わせてるんだよ」
「あえてですか」
「あと他にも死んでいってるだろ」
「ですね、性病になったりして」
 娼婦達から起こっていた、見ればエイズや梅毒マンションの一階にはモグリの医師もいるが面倒臭がって病院に行かず悪化させた者達もいた。
「それで」
「死んでいってる奴もいるな」
「そっちも結構」
「あと中毒で死んだり」
「薬とか酒でな」
「酒も酷いですしね」
 マンションの中で出回っている密造酒はそうだった。
「メチレンとかありますし」
「よく知ってるな」
「大学文学部だったんで」
 それで知ってるとだ、唯和は達也に答えた。
「それで」
「そうでか」
「はい、知っています」
「あれ飲んだらどうなるか」
「カストリですからね」
 唯和はこの酒の名前も出した。
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