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ヘドロ
第一章
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               ヘドロ
 日本の東京都にあるそのマンションは区役所からもその存在をなかったことにされていた、それで新人の区役所員である宇和美唯和も上司の直江達也にこう言われた。
「あのマンションには絶対に行くな」
「けれどあそこは」
 唯和は達也にすぐに言った、二重の切れ長の細めの目で眉はしっかりしている。七三で右に分けた黒髪は清潔で頬がすっきりした面長の顔である。背は一七一程で首が長い。
「うちの区ですよ、人も大勢いますよね」
「その人が問題なんだよ」
 達也は唯和に険しい顔で答えた。黒くしっかりした眉にきりっとした男らしい目をしている。面長で日に焼けた顔をしており厚い唇の口は一文字だ。黒い髪の横を短く刈っていて左右に奇麗な感じでセットしている。長身で背は一八二はある。
「あそこはな」
「っていいますと」
「お前凶悪犯とか人間の屑が何処に行くか知ってるか」
 それこそという口調での言葉だった。
「一体」
「?何がですか?」
「だからだ、そうした連中が刑務所から出たりしたらどうだ」
「そりゃ社会復帰するでしょ」
 何でもないといった顔でだ、唯和は達也に答えた。
「普通に」
「お前大学卒業したばかりだったな」
「はい、今年の三月に」
「だったらまだ知らないな」
「知らないって何がですか?」
「日本はそもそも前科者に厳しい社会なんだよ」
 達也は唯和にこのことから話した。
「犯罪やった奴の社会復帰もな」
「難しいですか」
「そうだよ、それが強姦とか殺人とかやった奴はどうだよ」
「それは」
「わかるだろ、そんな奴誰も雇わないしな」
 それにという口調だった。
「排除するものだよ」
「村八分ですね」
「それが過失犯ならまだいいさ」
 それならというのだ。
「けれどこれが常習犯とかそれが楽しくて仕方ないとかな」
「そうした屑もいますね」
 このことは唯和もわかった、そうした輩が世の中にいることはまだ若いと言うしかない彼にもわかることだった。
「実際に」
「そんな奴どうなる」
「世の中から排除されて」
「大体そんな奴傍にいたら何されるかわからないだろ」
「そうですよね」
「犯罪やってなくてもどうしようもない屑とかな」
 達也はその場合についても話した。
「いるだろ」
「そうした奴はどうなるか」
「それだよ、家とか下宿先から追い出されてな」
 つまり住んでいる場所からだ。
「人間性が駄目過ぎてな」
「そんな奴がどうなるか」
「家もない、仕事も屑だとな」
 人間的にそうであり過ぎると、というのだ。
「誰も雇わなくなるだろ」
「会社で悪いことされるとなると」
「そうなるだろ、だからな」
「そんな奴がどうなるか」
「何処も居場所がなくなって何処に行くか」
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