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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十五話 六芒郭攻略戦(一)
[前書き]

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【第五部〈皇国〉軍の矜持】
「矜持とは生きるためには不要なものであり、良い仕事をするためには欠かせぬものである」といったのは誰であったか。
成程、俚諺は真理であるが、良い仕事――功績を名誉と呼ぶようになれば、名誉は権勢の為の賭け金へと転ずるのも自然の摂理。
銀の匙を咥えた者達は名誉をやり取りして権威に変えようと鋭剣を振るいながらやり取りをしている。されどそれは本当に誇り高きものと呼ぶべきか?
〈皇国〉軍はもはや銀の匙を加えた男たちの倶楽部が指揮権を独占するものから変質しつつある。
 その中で血筋の為に貴族が血を流して要塞へと軍を向けようと決めるのは古き良き矜持が故か、あるいは旧時代から抜け出せぬ蛮性故か?
 我らが向かう先は優雅で壮麗な戦姫はすでに勝利を確信し、戦後を見据え、矜持の為に要塞の包囲網に決着を付けようとしている。
 進歩主義者は戦場で沈黙し、矜持と権勢の為に雄弁を振るう者達が鋭剣を掲げようとしている。
そして私はこの国の中でおそらくその中で最も雄弁な人間の一人だろう
――馬道豊久の日誌より

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