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星河の覇皇
第七十二部第五章 二つの政府の統合その十四

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 幹部が一人来てだ、彼が主席としてのこの日の仕事を終えたのを見極めてから言ってきた。
「総裁、次の選挙ですが」
「下院、いや違うな」
「はい、総裁選ですが」
「それだな」
「やはり出馬されますね」
「そのつもりだ」
 落ち着いた声でだ、クリシュナータはその幹部に答えた。
「そうさせてもらう」
「そうですか」
「そうだ、しかしだ」
「それでもですね」
「私は今期で国家主席の任期が終わる」
「二期目も」
「三期目は出ない」
 これがクリシュナータの返事だった。
「そのことは既に言っているな」
「はい、では」
「今回の総裁選がだ」
「総裁にとっては」
「最後の総裁選だ」
「そうですね、そしてなのですが」
 幹部はその目を強くさせてクリシュナータに言った。
「総裁は後継者は」
「一人会えた」
 クリシュナータは今度の質問にはこう答えた。
「見事な御仁だ、若く資質もありカリスマ性もある」
「そうした御仁ですか」
「そうだ、しかしだ」
「しかし?」
「その人物を君達が受け入れてくれるか」
「総裁の決められたことなら」
 幹部はこの時は彼の考えられる範囲内において答えた、少なくとも突拍子のない人物とは思っていなかった。
「誰でも」
「私が後継者に推すというよりはな」
「むしろですか」
「その人物を世に出すか」
「世に?」
「そうだ、そうなるか」
「その方は一体」
 幹部、党の政調会長であるマハラーター=ザガーンはここで怪訝な顔になった。ターバンがよく似合う口髭と顎鬚、頬髭を生やした男だ。
「どなたでしょうか」
「君も知っていると思うが」
「私も」
「近頃急に国内外で知られてきた」
「まさか」
 ここでだ、ザガーンはさらに怪訝な顔になった。そのうえでクリシュナータに問うた。
「その方は」
「そのまさかだ」
「それは」
「支持出来ないか」
「冒険ですが」 
 lこれがザガーンの返答だった。
「それは」
「幾ら何でもだな」
「はい、あの御仁については」
「階級が問題か」
「流石に」
「その階級の国家主席はだな」
「国家主席になりますと」 
 それこそというのだ。
「流石にカーストが」
「それがだな」
「問題では」
「せめてだな」
「はい、シュードラ階級の国家主席も過去何人も出ていて」
「君もそうだしな」
「そうです」 
 ザガーンはクリシュナータの自分への問いに毅然とした態度で答えた。

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