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水の国の王は転生者
第五十話 父と子
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に涙と溜めたアンリエッタに、キスをしようとしたがマリアンヌが離してくれない。

「ちょ、母上離して」

「私にもキスして」

「ふぇっ!?」

 マリアンヌの言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「じゃないと離さないから」

「ぐぬぬ……」

 アンリエッタの方を見ると、今にも涙がこぼれそうで、早く慰めないとと気が(はや)る。
 続けて、エドゥアール王の方を見ると、苦笑いをしていてマリアンヌを止める気配は無い。

(仕方ない)

 マクシミリアンは、マリアンヌに掴まれた手を口元まで持って行き、マリアンヌの手の甲に軽くキスをした。

「頬が良かったのに……」

「贅沢を言わないで下さい」

 マクシミリアンは掴まれた手をやんわりと解いた。

「さ、アンリエッタ」

 マクシミリアンは片膝を付いてアンリエッタを抱き寄せた。

「お兄様……」

「よしよし……アンリエッタ。別れが悲しいのは分かるけど、泣いてしまったら、せっかくの可愛い顔を台無しだぞ?」

「でもでも、ずっと会えなくなるなんて……」

「永遠に会えなくなる訳じゃないよ。精々、一年か二年か……とにかく、絶対帰ってくるから。それまで父上と母上を困らせるような事はしないように、な?」

「……はい、お兄様、アンリエッタは良い子にしています」

 何とか、愚図るアンリエッタを説得したマクシミリアン。

「では、改めて父上、母上、アンリエッタ、言って来ます」

 そう言ってマクシミリアンは竜籠に飛び乗った。

「達者でな、マクシミリアン」

「父上も。執務室に強壮の秘薬を置いておきましたので、、後で飲んでくださいね」

「心配かけてすまなかったな」

「父上も、ご自愛を……」

 ゆっくりと浮かぶ竜籠に多くの家臣たちが手を振って見送った。
 マクシミリアンも手を振り返し、やがて竜籠は空の彼方へと消えていった。

 これが父と子、二人の永遠の別れである事など誰も知るよしはない。


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