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曇天に哭く修羅
第一部
異常な弱者
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いた者は現在の世界で20人も居るかどうか。


「しかし紫闇という小僧、増幅と操作の過程を飛ばすとは面白いのう。そんなことが可能な『人間』は去年おっ()んじまった史上最強の《神代蘇芳/かみしろすおう》やレイア、エンド、今の日本に居る【魔神】みたいな奴等くらいじゃろうて」


ならば紫闇は何なのか。


「兄さんは彼と幼馴染みだから気付いてたんだろうね。【神が参る者(イレギュラーワン)】だって」


焔の指摘にレイアが口を開く。


「99%そうだろうなあ。知り合いと同じ感じがするし【神仏魔性(ディバイン)】とは明らかに違うし弥以覇さんなら判別できるんじゃ」


弥以覇は夜空を見上げた。


「ふっ、60年以上前から終戦まで散々に()り合った連中と同じ匂いがしとるよ」


彼はかつてのことを思い出す。

今や世界中に殆ど残っていないだろう最前線の更に中央や隠れた死地の経験者。

黒鋼弥以覇は60年前に終結した【邪神大戦】に身を投じて戦っていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


人類と上位存在の戦争が邪神大戦だが全ての上位存在が敵だったわけではない。

人類に味方する半数の上位存在は【古代旧神/エルダーワン】と呼ばれ、敵になった上位存在は【旧支配者/オールドワン】と呼ばれた。

しかし弥以覇にとって敵味方などは無く、かと言って善悪も興味の対象では無く、ただ強いか弱いかこそが重要な事柄であったのだ。

もし強いなら立場や状況など無視して等活地獄に居る修羅の如く挑み掛かって()く。

黒鋼一族が持つ戦闘狂の(さが)を抑えず本能の望むまま、ひたすら闘争に明け暮れた結果として、弥以覇は大戦が終わる立役者となる。

しかしあまりに無軌道で無差別に暴れ回ったことで功績は無かったことになり、その存在は歴史の闇へと葬り去られてしまう。

本人はどうでも良いと思っているが。

三千年に及ぶ邪神大戦の中で最も上位存在を倒した紛れもない黒鋼一族史上最強の鬼神。

それが黒鋼弥以覇である。


「あの頃は(たの)しかった」


道を歩けば鬼に当たるような時代。


「特に上位存在は面白い好敵手じゃった。まあ【神が参る者(イレギュラーワン)】には一段劣るがの」


神が参る者/イレギュラーワン

それは上位存在を宿す人間。

強さは宿した上位存在の強さに比例するが、彼等は例外無く化け物と言って良い。

上位存在は人間に宿ると互いの力を引き上げる性質を持つのだが、宿主が死んだ場合には宿った上位存在も同時に消滅してしまうのだ。

上位存在は殺されても石化して封印状態になるだけで何れは復活できる。

わざわざ死のリ
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