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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十四話 虎城防衛線会議
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皇紀五百六十八年 九月十三日 縦川 背州軍仮司令部庁舎内 第一会議室
軍監本部戦務課長 窪岡少将

この会議室に集められたのは、虎城防衛線に集結した軍司令官達である。
 護州軍司令官の守原英康大将と駒州軍司令官の駒城保胤中将が静かに相対し、最年長と最年少の軍司令官である西州軍司令官の西原信英大将と背州軍司令官である宮野木和麿中将が共に不愉快そうに皺を刻んでいる光景は国軍の会議というよりも講和会議のようだ、と軍監本部の代表者を押し付けられた窪岡戦務課長は思った。
また一方で、龍州軍司令官の須ヶ川大将は憔悴しきった様子で黒茶を啜っており、近衛総軍司令官の神沢中将も東州の護りについている安東家の分家筋であるが、この会議には無関心な様子である。
彼らにとってはこの会議は最終的な決定事項を聞き取るだけのようなものでしかないという事が分かる。
戦務課・兵站課などといった部署から派遣された参謀達を束ね、この会議の結果をどうにか取り纏めねばならない。五将家だけではなく兵部大臣官房にいる馬堂。更に近衛総監部、内務省に水軍主流派に皇室魔導院、後備動員予算を握る衆民院の各政党も裏で暗躍している。
敵軍の主力が合流を後れさせた事で虎城は雨季の訪れが間もない、軍監本部のまっとうな参謀達はこの時点で<帝国>軍が大規模でなおかつ長期的な軍事行動を行う事はほぼ不可能であると結論付けていた。
「軍監本部としましては、今回の大きな議題となりうるものはほぼ一つであると考えています」

「ほう?」守原大将が眉を上げ、宮野木中将は無関心そうに茶菓子を手にとった。

「導術観測によると辺境領軍の本隊が合流するまであと半月ほどだと予想しております。雨季の前に連中はうごかなければなりません。
これで六芒郭周辺に展開している<帝国>軍は総計二十五万に達するものと思われます。
六芒郭の防衛にあたる新城支隊は任務を全うしようとしております。我々はそ支援にどれほどの戦力を投ずるべきか、です」
「二十五万……」西原大将が瞑目し、繰り返した。

「ふむ」守原英康は茶菓子を口にしながら頷いた。
「六芒郭……駒州の育預殿が奮戦しておると聞くが。ここまで本領軍を食い止めておられたのだ。その功績はあまりまるものであろうな」 
宮野木の若殿が周囲を伺いながら言う
「しかし、だ。彼らは要塞を利用し敵を食い止めてきた。二十五万をも超えた軍勢となると六芒郭の包囲を続けるにせよ、数個師団は動かせるだろう、皇龍道を衝く可能性も否定できぬのでは?」

「兵站状況を考えるのならばその可能性は低いだろうと軍監本部としては考えています」
 兵站課の参謀が答える。
「要塞攻略というものは、大量の歩兵はもとより、砲兵による支援が無ければ不可能です、つまりは非常に弾薬を浪費します。こ
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