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曇天に哭く修羅
第一部
挫折
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入学から十一日目。

《立華紫闇/たちばなしあん》は朝の訓練開始時に教官の《斬崎美鈴(きりさきみすず)》へと実戦訓練が受けられるよう願い出た。

周りの反応はというと。


規格外(ゴミタイプ)が何言ってんだか」

「負けるのがオチだろ」

「貴重な訓練スペースが狭くなる」

「意味も価値も無え」

「無い無い尽くしだな」

「良いじゃんやらせろよ」

「面白いものが見られそうだ」


二軍と一軍の生徒が紫闇に対して口々に文句を言う中で《江神春斗(こうがみはると)》が眼鏡を逆光で輝かせながら前に出る。


「立華紫闇。貴君が踏み出そうとしているのは修羅道も同然の世界。それでも歩もうというのなら、俺が相手になろう」


どうやら彼は気を遣ってくれたようだ。


「心配してくれてありがとな江神。俺は絶対に諦めない。大活躍して【魔神】になって世界中の人間に俺の名を刻んでやる」


周りから冷笑が聞こえるが江神は笑わない。


「その意気や良し」


彼の目が鋭くなり眼光が煌めく。

紫闇は負けじと睨み返した。


「待て立華。貴様と江神を戦わせるわけにはいかん。訓練で死人が出ては困るからな。よって相手はこちらが選ぶ。《佐々木青獅(ささきあおし)》、こいつに『現実』というものを、【魔術師】の厳しさを教えてやれ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(現実と厳しさを教えてやれ、か。俺の負けが決まっているような言い草だな)


紫闇は直ぐに青獅を倒そう、そして春斗を指名しようと思い、相手の顔を見た。

ゾクリと寒気が襲ってくる。


(何ビビってるんだ俺は。大丈夫だ勝てる。だって俺は『特別』なんだから)


佐々木青獅は紫闇が訳も解らずに恐怖していたあの笑顔をしている。

一人の生徒が美鈴の指示で結界発生装置を起動すると体育館の床に走る無数の(みぞ)から半透明な幕が伸びて八角形のドーム型をしたバトルフィールドが形成された。

生徒が続けて装置を操る。

結界に入り口が出来た。

紫闇と青獅が中に入り終えると入り口が閉じられてしまうが棄権(リタイア)すれば開くので問題ない。


(何だこの異常な空気。それに幾ら閉鎖した密室とは言え極端に狭いような)


結界の外に居る皆が遠慮無く悪意に満ちた目を紫闇に対して向けていた。


「逃げ場は無いぞ。立華紫闇」


春斗は眼鏡の奥に有る瞳で結界内の二人を見詰め、戦いを注視している。

紫闇の体は震えていた。


(どういうこった。何でこんなに怖いんだよ。相手は佐々木なんだぞ? 小学生くらいの身長だった筈なのに何で俺よりデカイ? まるで別人じゃ
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